子猫との日常 | ナノ


目が覚めると、何故か目の前には静雄の顔があった。
あれ、確か昨日は一緒に寝なかったはずだよね?


「静雄?」

「んん…、」


片腕で思い切り引き寄せられて、鼻先が静雄の胸に当たった。…抱き癖は健在と見た。
もぞりと手を出して、静雄の肩を叩く。


「静雄、起きて」

「んぅ…、」

「おはよ。どうしたの?」

「あぁ……」


静雄は何度かゆっくりと瞼を上下させてから、ふわりと、優しく優しく笑った。


「…誕生日、おめでとう」


……え。

ベッドの中でくしゃりと頭を撫でられる。
静雄はあくびを噛みしめながら、ぽかんとしている私をぎゅうぎゅうと抱きしめた。


「本当は今日の0時に言いたかったんだけどよ、奏もう寝てたから。だから一緒に寝ることにした。そしたら、一番最初におめでとうって言えるだろ」

「あ…そう、だったの」


ぽぽぽっと頬が熱くなるのを感じる。…そっか、そうだ。今日は私の誕生日だった。

静雄は「顔赤いぞ」とからかうように笑った。うるさい、と一言だけ投げ付けて静雄の胸に額を押しつける。


「奏、生まれてきてくれてありがとうな」

「うん…」

「愛してる」

「う、ん…」


ちゅ、と額に軽くキスをされて視線を上げれば静雄と目が合った。自然と顔が近づく。触れ合うかどうかという時、バン、と勢い良く部屋のドアが開かれた。


「おはよう奏!誕生日おめでとう!ほら、にゃんこも」

「かなで、おたんじょうび、おめでとう!」

「あ、ありがとう…」

「……チッ」


静雄は隠そうともせずに舌打ちをした。…臨也、絶対わざとだ。と、臨也とイザにゃんの後ろからサイケとデリック、日々也がひょっこりと顔を出した。
みんなからそれぞれ「おめでとう」と言われ、笑って「ありがとう」と返す。


「今日は俺らが朝飯用意したから、奏はゆっくりしていいぜ」


道理でいい匂いしてると思った。笑顔で頷いて、私は未だに機嫌を悪くしている静雄に苦笑しながら着替える為にベッドから降りた。





夜。テーブルの上にあるご馳走はもちろん津軽の手作りで、私の好きなパスタメインの料理は本当に嬉しくて美味しい。津軽は料理しかできないから申し訳ないと言うけれど、充分素敵なプレゼントだ。


「これ。俺と日々也から」

「ありがとう。開けてもいいかな?」

「どうぞ」


日々也がにっこりと頷いた。大きなリボンが付いた箱を開けると、そこには白いショルダーバッグ。


「わあ…!ちょうど欲しいと思ってたの。ありがとう」

「お気に召したようで良かったです」


日々也がほっとしたように胸を撫で下ろす。日々也とデリックの頭を撫でてあげると、二人とも照れ臭そうにはにかんだ。くぅっ可愛い!

早速明日から使おうとバッグを横に置くと、今度は臨也が小さな箱を差し出した。


「俺からはこれね」

「……アロマキャンドル?」

「正解」


箱の透明になった部分から可愛らしい器に入ったキャンドルが見える。


「ローズとアクアリリィとレモンラベンダーが入ってる。奏最近仕事を家に持ち帰ってるでしょ?パソコン弄りながらでも机の上に置いておけばいいよ」

「確かに落ち着くかも。ありがと、臨也」

「ん」

「かなで!」

「おれとイザにゃんからは、これだよ!」


サイケとイザにゃんは、どこから持ってきたのか、両手にブーケを持っていた。
サイケは白とピンク、イザにゃんは黄色の花をメインにしたものだ。小さな花束は、綺麗な紙とリボンでラッピングされている。


「おはな、えらんで、」

「お花やさんに教えてもらいながら、作ったの」

「え、サイケとイザにゃんがラッピングしたの?」

「「うん!」」


びっくり。だってすごく可愛くて綺麗だもん。てっきりお店の人がやったのかと…。
ほわほわ笑う二人にもありがとうと頭を撫でた。二人とも、すごいすごい。


「あとは俺だな」

「静雄はなんだろ」

「ん、これ」


静雄が取り出したのは細長い箱。ぱかりと蓋を開けると、そこにはキラリと透明に光る宝石がシンプルに取り付けられたネックレスが上品に鎮座していた。


「綺麗…。これって、」

「ダイヤモンド。4月の誕生石だろ」


すげぇ小さいけど、と少しバツが悪そうに視線を泳がせた静雄にブンブンと首を振る。

大きさとかじゃ、ない。嬉しい。

みんなから貰ったプレゼントもすごく嬉しいけど…好きな人からというだけで、こんなにも……。


「ありがとう。大切にする。ちゃんと、付ける」

「お、おう」


頬を少し赤くした静雄は何かをぽそりと呟いたけど、残念ながら私には聞こえなかった。頃合いを見計らったように津軽が立ち上がる。


「ケーキ、あるから。あと奏の形したムジパンも作ってみたんだ」

「本当?楽しみ!」

「あーそうだ。奏、これ八面六臂から」

「メッセージカード…。八面六臂も、ありがとう」

「ははっ、照れてる」


ピカピカとデリックのヘッドホンが光った。

すごく幸せな気分に浸りながら、私はひたすらみんなに感謝の言葉を言い続けた。






(素敵な日をありがとう)


(今度はネックレスじゃなくて、お前の薬指に合ったやつを贈るから)






2011.4.13





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