子猫との日常 | ナノ


奏たちの同窓生である闇医者さんから電話があり、日々也と共に教えてもらったマンションまで行くと、そこには信じられない光景が待ち受けていた。

いや、俺が信じられないとか言うのもなんなんだけど。


「奏、なんかこの人たちあやしいから、近づかないほうがいいよ」

「うー?でも、しうちゃににてるよ?」

「は?どう見ても俺じゃねぇだろ、こいつ」

「でりっく!ひびや!あのね、かなでも、しずおも、いざやも、みぃんなちいちゃくなっちゃったんだよ!」


ソファの上にちょこんと収まっている四人のちびっ子たちには、確かに面影があると言われればある。しかしこの事態が飲み込めない。隣に立つ日々也を見れば、明らかにフリーズしていた。

電話をかけてきたと思われる闇医者さんが、歓迎するように腕を広げた。


「君たちとは初めましてかな。電話でも言ったけど、僕は岸谷新羅。それにしても君たちも津軽くんやサイケくんと同じで静雄や臨也にそっくりなんだね。どうかな、今度検査をぐフッ!」

『今そんなことを言っている場合ではないだろう!』


ガスリと勢いよく鉄拳を打ち込んだのは、前に一度テレビで見たあの首無ライダーだ。もっとも、今はヘルメットを被っているから本当に首が無いのかどうか確認はできないが。

殴られて何故か嬉しそうに笑う闇医者さんは、簡単に現状の説明を始めた。


「単刀直入に言うと、奏たちには小さくなる薬を飲んでもらったんだ。見事成功したよ。まぁ、本当は私たちの年齢なら5歳になる予定なんだけど、薬の効きやすい奏は3歳に、どこらかしこ頑丈な静雄は10歳になってしまったみたいだね。臨也は標準的に5歳だよ。いやぁでも三人とも理解が早くて助かったよ。静雄なんか暴れだすと思ってたけど」

「そうなんすか…」


小さくなる薬って、どんなキテレツ学者だよ!とツッこみたい気持ちを抑えて、幼いながらも警戒心丸出しのシズと臨也、年相応にじゃれ合う奏とにゃんにゃんを見る。可愛い。可愛いんだけど…これ、世話するにはすげぇ大変なんじゃ……。


「デリック、どうしました?早く連れて帰りますよ」

「日々也…。連れて帰るったって、こいつら素直に付いてくるかどうか」


特にシズと臨也な。
そう小声で呟けば、日々也はため息をついて俺を見上げた。


「そういうのが得意なのはあなたでしょう」


そういうのってどういうのですか日々也様…。
……でも、ま、そうかもな。俺子供好きだし、幸いにもシズ譲りの力は持ってる。
俺は意を決すると、にゃんにゃんに帽子を被せる日々也の隣で小さくなったシズと臨也に手を伸ばした。


「よーしお前ら、家に帰るぞー」

「わっ…、いきなり何すんだよ!」

「どこにつれていく気?」


二人を易々と抱き抱えると、キッと鋭い眼差しで睨まれた。うわぉ、臨也ってば小さい頃からしっかりしてんのな。
ぱたちたと暴れるちびっ子どもは、残念ながら俺にとって屁でもない。


「未来のお前らは、奏の家で俺たちと暮らしてるの!」

「ほんとう…?」

「奏って、あのちっこいのだろ。なんで一緒に」

「いろいろあったんだよ」


シズは心底不思議そうに目をぱちくりさせたが、臨也は驚きながらもどこか嬉しそうにふわふわした笑みを浮かべた。うん、にゃんにゃんそっくり。やっぱにゃんにゃんって臨也の幼少期に似てんのな。

奏を抱き上げ、にゃんにゃんの手を引いて日々也は闇医者さんたちに頭を下げた。


「それでは、失礼します」

「うん。本当はもっとその子たちのこと観察したかったんだけど、君からなんかすごいオーラが出てるから止めておくよ。ああ、薬の効果はだいたい一日で切れるから。あと、着せてある子供服はあげるね」


ひらひらと手を振りながら、闇医者さんは玄関で見送ってくれた。俺もシズと臨也を両脇に抱えながら、小さく頭を下げた。

さて、津軽とサイケはどんなリアクションすんのかな。

…てか、八面六臂、思わぬところで奏の幼少期見れて悶絶してるんじゃね?

そんなことを思ってくすりと笑えば、ヘッドホンから「うるさい」と一言だけ投げ付けられた。






(お迎え)

(奏、可愛い…!)





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