子猫との日常 | ナノ


「……増えたな」

「増えたね」

「一気に2人も」

「うん、2人も」

「しかも今回は等身大か」

「身長も体重も一緒みたい」

「一応聞くが…一緒に、」

「住んでるよ」


隣でえへへと笑う奏に、ため息を一つ落とした。

遊園地に行かないかと誘われて集合場所に来たら、知らない顔が(いや実際は見知った顔だが)増えていて驚いた。
猫耳を生やしたちっこいのを拾っただけでも驚きだったのに、まさかこんなでかい男をまた2人も拾うとは。


「お前も物好きだよな…」

「そうかなぁ?でも二人ともすごくいい子だよ?」


本人と違って、とぼそりと呟かれた言葉は聞かなかったことにしよう。

臨也の方は区別しやすいが、静雄の方は黙ってりゃ区別つかねぇな…。実際いま区別つかねぇし。どっちが静雄だ?


「サイケ、津軽、こっちおいで」


腕を組んで2人の静雄を見比べていると、奏がちょいちょいと手招きをして呼び寄せた。ぴくりと一人が反応する。…おぉ、てことは、そっち静雄だったのか。


「この人は門田京平くん!一緒に遊園地に行くからね」

「門田だ。よろしくな」

「よろしく、ドタチン!」


臨也とそっくりな方が満面の笑みで手を握った。奏はちゃんと名前で紹介したのに。後ろを見ると臨也がニヤニヤと笑っている。あいつの仕業かコノヤロウ。


「こら、サイケ。自己紹介」

「あっ、そうだね。おれはサイケデリック臨也!サイケって呼んでね!」

「俺は津軽島静雄。津軽でいい。よろしく」

「あ、ああ…よろしく」


さっき奏が呟いた言葉の意味が分かった気がする。確かに、似てるのは外見だけで中身は全く違うようだ。
津軽は軽く頭を下げると、サイケの頭も軽く押して下げさせた。


「見ればわかると思うけど、ヘッドホンして白いコート着てるのがサイケ、黒ズボンに青いジャケットが津軽。見分けつくでしょ?」


臨也はいつも通りの黒いコートを着てるし、静雄はジーンズだもんな。
わかったと頷くと、奏は他の三人も呼んだ。


「みんな忘れ物ない?じゃあ、しゅっぱーつ」


何とも気の抜けた号令で、俺たちは歩きだした。



















その遊園地は郊外にあって、電車に揺られること数十分。その間周囲の人々の視線が気にならなかったわけではないが、よく耐えた俺。偉い。


「わー、津軽見て!テレビとおんなじやつ!」

「そうだな」

「いざや、あれのるの?」

「乗るよー。でもにゃんこは身長制限あるかも」

「割とでかいんだな」

「そうだねー。待って、今チケットまとめて渡してくる」


これは周囲の人に気にするなと言っても無理な話だろう。個性が強すぎるメンバーの集団に、俺は早くも疲れていた。
狩沢と遊馬崎で少しは慣れてるつもりだったんだがな。あれは2人だけだからまだ良い方だったのか。

受付を終えて入り口を通ると、そこはもう立派な遊園地で、アトラクションの他にも着ぐるみやポップコーンやアイスの屋台がそこらかしこにいた。


「「すごいすごい!」」


サイケとちっこいのが目を輝かせる。さりげなくその横で奏も目を輝かせていた。


「うわー遊園地だ」

「当たり前だろ」

「奏は遊園地1回しか来たことないもんねぇ。あれ中3の時だっけ?」

「そうそう、学校サボって臨也と来て以来かな」

「…………」


あ、静雄妬いてる。
臨也のことだから、きっと狙ってやっているのだろう。遊園地が廃墟にならなきゃいいが。

前途多難な状況にため息をつくと、京平、と名前を呼ばれた。


「ん?あぁ…なんだ津軽」


普段京平なんてほとんど呼ばれねぇから、一瞬戸惑った。どうやら津軽は俺のことを京平と呼ぶことにしたらしい。……地味に感動。


「頼みがあるんだ」

「頼み?」

「少しでいいから、奏と静雄を二人きりにさせたいんだ」

「シズちゃん、奏をおれたちに取られていやなはずなのに、いつも我慢してるから」

「そうか…わかった」


そう言うと二人は顔を見合わせて笑った。お前ら良い奴だな。


「三人とも、行くよー」


奏に呼ばれて降り返る。
今行くと返事をしながら、とりあえず奏の隣にいる黒いコートを何とかしねぇと、と考えて、俺は歩きだした。





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