九十九屋真一『今日の情報はここまでとしよう。あとは自分で調べられるだろう?』
折原臨也『ああ。…全く、情報屋にとって屈辱的だよ。お前に聞かなければわからないなんて』
九十九屋真一『若い頃にそうした思いをする方が、将来的に得をするものだ』
折原臨也『何才だか知らないけど、悟ったような口きくね』
九十九屋真一『それは君だって同じだろう?若い子たちに散々いらないことを吹き込んで。そういえば、明日は土曜日か』
折原臨也『どうしたんだ、いきなり』
九十九屋真一『今日は奏ちゃんが嬉しいお土産を持ってくるぞ』
折原臨也『奏が?てか馴れ馴れしくちゃん付けするな』
九十九屋真一『おや、君はまだ奏ちゃんにご執心かな?』
折原臨也『うるさいよ。それよりお土産ってなんだ』
九十九屋真一『帰ってきたら聞けばいいじゃないか。そろそろ帰ってくるよ』
折原臨也『……あまり奏のこと嗅ぎ回るなよ』
九十九屋真一『君と違って、別に奏ちゃんの情報を特別集めているわけじゃない。一緒に住んでいる猫耳少年と、君と平和島静雄そっくりの青年たちも然りだ』
折原臨也『……』
九十九屋真一『気を悪くしないでくれ、素敵で無敵な情報屋』
折原臨也『故意の発言だと受け取っておくよ。それじゃ』
九十九屋真一『ではまた。いつでも待っているよ』
パソコン画面に映るウィンドウを閉じて、ため息をつく。
九十九屋真一……本当に食えない奴だ。奴に関する情報はどこをどう探しても出てこない。そのくせ俺よりも情報を持っているのだから本当に腹が立つ。
「ただいまー」
下から奏の声が聞こえた。どうやら帰ってきたみたいで、続けてにゃんことサイケの声が聞こえる。
そういやあいつ、にゃんこたちのことも知ってたな。どうやってもバレるとは思っていたが、もしあいつが俺の知らないあの子たちを知っていたらと思うと不快感が押し寄せ、俺は顔をしかめた。
「臨也、明日予定ある?」
「ないけど」
「じゃあみんなでここ行こう!」
夕食の席で、奏が鞄から細長い紙切れを数枚取り出した。
「遊園地…?」
「うん。今日偶然会った友達からもらってさ」
それは遊園地の入場チケットだった。九十九屋の言ってたお土産ってこれだったのか。
「これなに?」
「遊園地。イザにゃんもサイケも津軽も初めてだよね」
「おれ知ってるよ!お馬さんがくるくる回るの!」
「そういえばこの間テレビでやってたな」
「しずおは?」
「明日は仕事休みだって。だから一緒に行けるよ」
……チッ。心の中で小さく舌打ちをする。
と、ふとチケットの枚数が1枚多いことに気が付いた。
「1枚余るじゃん」
「ああ、まとめて貰ったから枚数合わなくて。ドタチンでも誘おうかなって」
「ふーん。ドタチンだったらいいんじゃない?」
「新羅だとセルティと一緒じゃないと行かないって言いそうだし、セルティだけ誘ったらまた新羅がうるさそうだしね」
同感、と頷いて奏と二人で笑い合う。正直な話、仮にシズちゃんの代わりに新羅が来たとしても、あまり嬉しくない。
「津軽は朝大変だろうけど、大丈夫?」
「ああ」
「ふふっ、楽しみだね」
「はやくいきたい!」
「じゃあ早くお風呂入って早く寝ないとね」
「うん!…んーと、いざや、いっしょにはいろ?」
今日は俺とお風呂に入るつもりらしいにゃんこは、座っている俺の膝にちょこんと手を置いた。……可愛いなあ。あ、そうだ。
「やだって言ったら、どうする?」
「だめなの?」
「んー…ほっぺにチューしてくれたら入ったげる」
「ちゅー?いいよ!」
にゃんこは何の躊躇いもなく、俺の頬にチューをした。ああ幸せ。そのままにゃんこを抱き抱える。
「臨也って絶対親バカになると思う……」
「そんなの実際親にならなきゃわからないよ。あ、何なら奏が俺の子供産むぅぐッ」
「何か言った?」
「…なんでもありません」
俺の脇腹に肘鉄が埋め込まれていた。…痛い。
早く風呂に入ってこいというニュアンスを隠そうともせず奏が笑うので、俺はおとなしく風呂場へ向かった。
「いざや、いざや」
「ん、なに?」
「ゆうえんち、たのしみだね!はやくあしたにならないかなぁ」
「そうだね」
腕の中で楽しそうに笑うにゃんこを見て、やっぱり可愛いなぁと頬を緩ませた。
……明日デジカメ持って行こうかな。
(しずおおかえり!)
(おう。風呂上がりか?)
(うん!ほんとはね、しずおとはいろうとおもったけど、しずおいなかったからいざやとはいった!)
(そうか。明日一緒に入ろうな)
(奏、にゃんこが…にゃんこが遠いよ…!)
(はいはい)