子猫との日常 | ナノ


……どうしよう。
これは、前代未聞のピンチかもしれない。


「しっ、しずお…死ぬ…!」

「ぁあ"!?…あー、悪い……でも、な。あ、あー」

「(あ、もう駄目だ。ごめんセルティ、俺も君を一人残して逝くのはとても辛いよ?辛いけど、もう無理…)」


だいたい、どうして俺は殺されかけているんだろう。いや、答えは出ている。静雄が動揺に動揺を重ねて、混乱しているからだ。

そして唯一静雄を止められそうな人物が私を助けてくれないのも、一つの原因かな。


「…………静雄」

「おっ、おう!」

「新羅、死ぬよ」

「おう!」

「いやだから…もう離してあげにゃ、……あげにゃ……ああもうッ、あげにゃよ!」

「……っおう!」


ゲホッ、ゲホッ、ったー……助かった、助かったよセルティ!私は間一髪で死の淵から戻ってきたんだ!

それにしても離し方ってものがあるだろう。あれじゃあ投げ飛ばされたのとあんまり変わらないんだけど。


「いたた……いずれにしても助かったよ奏。君が止めてくれなきゃ僕はとっくにあの世行きだったからね。ただ、もう少し早く止めて欲しかったかな」

「……当然の報いだバカ」


ソファの上でいかにも怒ってますと言う風に奏が呟いた。

いい加減この状況を説明した方がいいかな?

極々簡単に言わせてもらうと、奏の頭に猫耳が生えてて、静雄が興奮している。


「新羅くん、大事な所が抜けてるんじゃにゃい?」

「おおお俺は興奮なんかしてねぇ!」


おっと!危ない危ない、また静雄に捕まるとこだった。
えーと、大事な所ってのはあれかな、今の奏はナの発音がにゃんにゃんしちゃうことかな、それとも俺が奏に怪しい薬を飲ませたってことかな。あ、当然後者ですよねすいませんだから静雄にゴーサイン出さないで。


「どうすんの、これ。ちゃんとにゃおるんでしょうね」

「いや、奏無理して治そうとしなくても「にゃに?」…新羅、お前早く治せ」

「治せと言われてもねぇ。勝手に治るよ、薬の効果が切れれば」

「え、じゃあ効果切れるまでこのままにゃの?治す薬にゃいの!?」

「そういうことになるね」


いやぁ人生は正に奇想天外な出来事でいっぱいだよ!まさかちょっとした好奇心で作った薬がこんなにも効果を発揮するなんて!まあ、だからこそ一緒に作るべきだった対抗薬も作ってないんだけどさ。


「長くても3日で効果切れるから。良かったねぇ、今日から3連休で」

「……信じらんにゃい」

「とりあえずさ、家帰りなよ。此処に居ても状況は変わらないし、そろそろセルティが帰ってくるし」

「新羅、それ本気で言ってる?」

「本気も本気さ!だって考えてもみてごらんよ、セルティが今の君を見たら絶対可愛いって連呼して君にしがみついて耳ぴこぴこ触ったりして……俺に構ってくれなくなる!」

「さっき止めなきゃ良かった……」


え?何か言ったかい?

奏は呆れたような諦めたようなため息をつくと、何か頭隠せるもの貸して、と言った。帽子…とかあったかな。セルティは帽子が必要無いから……あ、俺のあったかも。


「はい」

「…これしか、にゃいの?」

「えぇっ、駄目かなあ」

「……これでいいです」


俺が渡したのは少し季節外れの大きな麦わら帽子。奏には悪いけど、これしかないんだ。

奏が立ち上がると、スカートの下で尻尾が揺れた。ああ、言い忘れていたけど尻尾も生えてる。まるでイザにゃんみたいだね。


「じゃあ、帰るね」

「うん。良い休日をね!」

「…連休が終わったら、覚悟しておいてね!」

「そんな満面の笑みで言わないでよ……」

「静雄、帰ろ」

「お、おう」


バタン、と。
玄関のドアが閉まって僕はやれやれと息をついた。

…まったく、無駄に死にかけたよ。元々その薬を奏に飲ませてくれって頼んだのは君なのに。


「貸し一つだよ、臨也」






(奏、早く帰ってこないかなぁ。ああ楽しみだ!)

(臨也、ニャン公抱いたままイスで回るな。目ぇ回してるぞ)
(津軽ーおれもやりたい!)
(危ないから駄目)





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