日々が巡るのは早いもので、3年生の6月。初夏ともとれる眩しい日差しに、若葉は青々と繁っている。
その光景に感動したいところだが、生憎と私の心はどんよりと重い。なぜならーー。
「やあ、空谷さん。今回は残念だったね。修学旅行の直前に風邪をひくなんて」
「ううう……新羅くん…その話はしないでっ」
ごめんごめんとにこやかに笑う新羅くんとは対照的に、私は今にも涙が溢れそうだった。
新羅くんの言う通り、修学旅行直前に風邪ひいた私は、一人寂しく一週間を過ごしたのだ。
熱が下がらなかったあの時ほど、私の体を恨んだことはない。
3年生の教室が並ぶ廊下で交わされる会話は、どれもこれも修学旅行の思い出話ばかり。聞きたいのが半分、聞きたくないのが半分という気持ちで教室へ入ろうとすると、ちょうど隣から出てくる臨也と行きあった。
「おはよ。…すごい顔してるね」
「おはよう。自分でもそう思う……」
「よっぽど行きたかったんだねえ」
「そりゃあ、友達とずっと計画してたし、すごーく楽しみにしてたし」
未練たらたら、まさしくそんな気持ちでため息をつく。臨也はじいっと私を見つめると、突然私の手を取って廊下へ引っ張った。そして、ちょうど教室から出てきた新羅くんに、すれ違いざまに言葉を投げかけた。
「新羅、俺たち今日休むから」
「えっ」
「サボりかい?青春を謳歌してるね。オーケー、適当に言っとくよ」
「ええっ?!」
いってらっしゃーい、と呑気な声で手を振る新羅くんに驚きを隠せないまま、階段を降る。というか、新羅くんは私とも臨也ともクラスが違うはずなのに、どうするつもりなんだろう?いろいろな考えがぐるぐる巡り、昇降口に着いても、私の頭は混乱していた。
登校時間も終わりに差し掛かっているこの時間帯では、登校する生徒もほぼいない。臨也は自分の靴を下駄箱から出すと、私を見てにやりと笑みを浮かべた。
「なにしてるの?ほら、早く靴出して」
「ど、どこ行くの」
「秘密。遅刻してくる生徒がいるかもしれないから、早く」
何が何だかよくわからないまま、私はローファーを履いた。とりあえず、だ。そのまま駅に向かい、電車を乗り継いで到着した場所は。
「ゆうえんち……」
看板が掲げられているゲートの向こうには、観覧車やジェットコースターの一部がその姿を見せていた。電車の中では学校をサボった罪悪感に駆られていた私だけれど、図らずもドキドキワクワクと興奮している自分に気づき、思わず頬に手を当てる。
はっ、やっぱり笑ってた?!学校サボってるのに……でも、でも!
「嬉しい?」
「うん!」
そっか、と頷いて、臨也はゲートに向かって歩き出した。受付のお姉さんと何か二言三言話し、チケットを購入。きっと適当なことを言って平日に制服で来たことを誤魔化したに違いない。こういう時私は口を出さない方がいいということは分かっていたので、臨也がチケットを2枚持って来てくれたことに素直に感謝しながらゲートをくぐった。