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キーンコーンカーンコーン…

4限の終わりを告げるチャイムが鳴り、来たるお昼休みにクラス全員が気を抜いた。私も伸びをして、はふぅ、と息を吐き出す。机の横にぶら下げている、二人分のお弁当が入った袋を掴んで教室を出た。目的地は屋上。私は毎日そこで食べる。ただし、お弁当の数からも分かるように私一人じゃない。


「(今日はすぐ来るかな…)」


廊下の窓から校庭を見下ろすと、今まさに土煙が上がったところだった。その土煙の中からサッカーゴールが舞い上がる。
授業が終わった直後とはまた違ったため息をついて、私は屋上へと足を速めた。





「やぁなまえ。遅かったね」

「…………いや」


私は時間通りに来ました。あなたが早すぎるんじゃないんですかね。
そう続けようとしたのだけど、私の彼…折原臨也が嬉しそうに手にぶら下げた紙袋をみるものだから、私は再度ため息をついて臨也の隣に腰を下ろした。


「てっきり校庭にいるのかと…」

「今日はずっと屋上で見物してたんだよ」

「要は授業をサボってここにいた、と」

「それより、ねぇ、今日のおかずは?」

「……えーと、」

「待って!俺当てるから!」


……じゃあ聞くなよ。
お弁当の蓋を開けずに箸を出していると、臨也がお茶の紙パックを一つくれた。
これが私たちのルール。私が二人分のお弁当を作って、臨也が二人分の飲み物を持ってくる。まあ、お弁当と飲み物じゃあ私の分が悪いとわかってはいるけど、なんとなく…臨也が私の料理を食べてくれるのは、とても嬉しい気持ちになる気がして。


「わかった!卵焼きと、ハンバーグとトマトでしょ」

「おーすごい。ほぼ正解。どうしてわかったの?」

「んー?俺が昨日食べたいって言ったものだから」


なまえはそういうの、ちゃんと聞いて作ってくれるし。

そう言って微笑む臨也は、さすが、学年一のイケメンと言われるだけあってすごくかっこよくて、思わず私は視線を逸らしてしまった。取り繕うように急いでお弁当の蓋を開ける。


「でも残念、他にかぼちゃの煮付けとごぼうの炒めものも入ってたんだよ」

「……そういうのは、いい」

「ダメだってば。臨也って見てれば野菜だけ綺麗に残すんだもん。ちゃんと食べて、空っぽのお弁当箱にして返してください」

「枝豆かグラッセだったら食べるのに」

「なにその微妙なセレクト」


ぶつぶつ文句を言いながらも、二人で手を合わせて「いただきます」をすれば、臨也はころっと表情を変えてぱくぱくとお弁当を食べ始めた。その顔がいつもと違って、あどけなさを残した子供の顔になるから、私は臨也とお弁当を食べたいと思うし、お弁当を作り続けるんだと思う。


「おいしいかな?」

「今さらだね」

「なんか聞きたいかも」

「ん……おいしい」


うーん、やっぱりご飯食べてるときの臨也はかわいい。「満足した?」と言って臨也は再びハンバーグを口に放り込んだ。
…でもやっぱり野菜は食べないんだね。


「ごぼう残してる」

「かぼちゃ食べた」

「ごぼう食べてない」

「…かぼちゃ食べた」


頑として聞き入れない臨也にむっとしながら、余ったごぼうの炒めものを箸で持ち上げた。そのまま臨也の口元まで持っていく。


「ほら」

「…………」

「あーん」

「ッ…!……あ、」


小さく開けられた口にごぼうを入れてあげると、臨也は私から顔を逸らしてしまった。変なの。残ったもう半分をもう一度口元に持っていく。今度はすぐに口を開けてくれた。
よし、ちゃんと綺麗に食べてくれました。


「ご、ちそうさま」

「はい、お粗末様でした」


笑いながら臨也のお弁当箱を片付ける。というか私はまだ食べ終わってないんだけど。すると臨也はまだ片付けていない自分の箸で、私のハンバーグを持ち上げた。む、横取りする気か。
そういう私の考えは見事に外れて、そのハンバーグは私の口元にぴたりと当てられた。


「なまえ、ハンバーグ残してる」

「別に残したわけじゃ、」

「あーん」

「……っ!?」


あーんって、あーんって…!あれ、でもこれってさっき私がしたことで…あれ、私無意識の内になんてことしてたんだろう!!
ぼぼぼっと火がついたように顔を火照らす私を、いつの間にかいつもの笑みを取り戻した臨也がニヤニヤと見ている。くっ…こいつ、仕返しのつもりですか…!


「早く」

「あ、う……」

「ほら」

「ぅ…あ、あーん……」


観念して開けられた私の口の中に半分に割られたハンバーグが入ってくる。もう、ハンバーグの味とか全然分からなくなってるわけで。ハンバーグを飲み込むことに四苦八苦している私に、臨也は再び箸を持ち上げた。…残り半分のハンバーグ。


「も、いい!ちゃんと自分で食べる!食べるから!」

「えー、俺のせっかくの親切心を無駄にするの?」

「ずいぶん嫌な親切心ですよ臨也さん…」

「いいからいいから」


はい、あーん。
うう…あーん。

そんなやり取りをしている内に、長いようで短いお昼休みはあっという間に過ぎていった。






砂糖味のランチタイム

「ねぇなまえ」
「んー?」
「明日はピカタと卵焼きが食べたいなぁ」
「うんうん、ポテトサラダとほうれん草のおひたしね」
「それは言ってない!」










▽▽▽▽▽
裕夏さまリクエスト、学生設定でデレデレな臨也でした!

デ、デレデレですかね…臨也さん…。なんだか単純に子供っぽくなっただけのような…。昼休みのランチタイムは自然にいちゃこらしてればいいと思ってこんなお話になりました!ちなみにタイトル後のやりとりは膝枕とかしてる設定です。言わなきゃわかんないですねすみません!汗

裕夏さま、ありがとうございました!