いつからだっただろうか。
君の白い肌に残る傷を目にするようになったのは。
伝わらない言葉
―――いくな。
君に伝える術を持たない私は、必死に服を掴んだ。
「どうしたの?」
優しい君は私の方を振り向いて、至極不思議そうな顔をしている。その顔に、まだ治っていない痣があるのを私は知っていた。
「大丈夫、すぐに戻ってくるよ」
微笑む顔すら痛ましくて。
それでも私にはひたすら彼の服を引っ張ることしかできなくて。
そしてするりと君は私の手を離した。
―――やめて!行かないで!
私の言葉は空を切る。
すぐなんて嘘だってわかっている、だって君はまたあの男の所に行くのだろう?
それはつまり、また傷を負うということなのだろう?
嗚呼、結局私は傷つく君を待つ事しかできないというのか。
無力な自分がどうしようもなく許せなかった。
雨が降っている音がする。
その夜、君は帰ってこなかった。
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犬×主人
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