「何してるの?」
「・・・・・・」
「ねえ、勇太」
何でコイツは僕のところに来るのだろうか。自分の星での生活とかはどうなってるんだ。
僕とコイツ、TPOは言わばお互いにとっては宇宙人な訳で、本来こうして話すことは疎か、会うことすらないはずだったのだ。
あれはいつだったか、僕が中学生になって間もない頃の帰り道だった気がする。
曲がり角にはご注意を
「(遅くなったな・・・腹減ったし)」
他愛もない事を脳裏に思い浮かべながら僕は帰りを急いでいた。何の変哲もない普通の住宅街の通りを、いつも通り歩いていただけなのだ。ただ、何かおかしな風を僕は一瞬感じた。だが、特に気にも止めず通りの角を曲がった。まさかそこにアイツが現れるとも思わず。
明らかに異質な空気が通りを包みこみ、僕は眼を見開いた。
「(な・・・何だあれ・・!?)」
怪しげな音、いや音波と言った方が正しいかもしれない響きが耳についた。そして幾何学模様のような光が広がり、僕はとっさに眼をつむった。一瞬自分は此処で死ぬのかもしれないと思ったのは致し方ないと思う。
しばらくしても何も起こらなかったため、僕はゆっくりと眼を開いた。
「・・・・・」
何か見てはいけないものを見てしまった。とりあえずきっとこれは夢だと判断した僕はほっぺたを引っ張ったりしてみたが、結局頬が赤くなっただけであった。
その時僕の眼の前に広がっていた光景を説明すると、怪しげな円盤状の鉄の塊のようなものが家の塀と立派な木の枝に引っ掛かっていた、しかもたぶんひっくり返って。そのうえ開閉部分が開きっぱなしになっており、中からリクルートスーツを着た青年が脱出出来ずにじたばたしていたのだ。
僕は係わり合いたくないという考えがひたすら頭を過ぎったが、なかなか踵を返すタイミングを掴めずにいた。
すると、仕舞ったことに青年と眼が合ってしまったのだ。青年は僕の姿を認めると「助けてっ」と言っているような僕には解らない言葉を投げ掛けてきたのだ。
僕もそこまで非道な人間じゃない。とりあえず絡まっていたらしい部分を解いてやり、その怪しい鉄の塊から救出してあげた。
自分より体格の良い彼を支えるのはとても大変だった。
彼は無事地に着くと、鉄の塊に向かって何やら腕に着けてあるブレスレットのようなもので電波を送ったのか、鉄の塊はふよふよと中に浮き、体制を整えるとまた怪しい光を放ち姿を消した。事が済み、青年は僕の方へ向き直ると、僕には理解出来ない言葉をしゃべりながら抱き着いてきた。
「ちょっと、あの!?」
僕が声をあげると、何か思ったことがあったのか、ブレスレットで何かいじると、にこりと笑ってまた口を開いた。
「ごめんね。突然の事だったから言語変更出来てなかったんだ」
僕は彼が何を言っているのかさっぱり理解出来なかったが、言葉は通じるようになった事に安堵した。
その後、あの鉄の塊もといUFOが治るまでのしばらくの間、僕は彼ことTPOの世話をしてやったのだった。
だが、何を間違えたのか。TPOは一度自分の星に帰ってからも頻繁に僕に会いに来るようになった。
そして今に至る訳だ。
「なあTPO・・・」
「何々勇太!!」
僕から話しかけた事がそんなに嬉しいのか、眼をきらきらさせながらこちらを見てきた。
「あのさあ・・・」
「うんっ!!」
「・・・やっぱりウザイ」
end
宇宙人TPOと中学生勇太の出会い。
つまり勇太は巻き込まれ体質なんだと思います。
TPOは勇太大好きです。ひどいこと言われてもたぶん明日にはケロッとしてまた現れちゃうそんな奴。
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