双子塔
ジルとマルクスは生徒会室という名の怪しい部屋を後にして、自分達の寮へ向かっていた。というのも、ユーリックに他の奴らは教室で諸注意を聞き終わり、もう寮に入っていると言われたからだ。
「・・・・はあ・・」
ジルは先程までに知り得たたくさんの情報を思い浮かべてつい溜め息がでた。自分の理解を超えたものがやはり此処にはあった。だが、それがいったいどう関係しているのか、まだまだ全てのピースが欠けていた。
そんなジルの胸元には学年を表す徽章以外に十字の徽章が新たに加わっていた。それはジルが生徒会役員になったことを物語っていた。
「どうしたんだよジル・カグラ上等兵っ」
ジルのそんな気持ちも露知らずマルクスは明るい笑顔を浮かべながら声をかけてきた。
「いいね君は脳天気で・・・あとわざとらしく階級強調すんなよ。マルクスだって同じだろ」
ジルとマルクスは生徒会室で階級も明記された学生証を渡されていた。
「ふふふっ。だってずっと憧れてた帝軍だよ。私は兄上のような立派な人になりたかったからね」
「ふぅん。ユラさんもこんなに慕ってくれる弟がいて幸せものだな」
ジルはマルクスを軽く受け流しながら、今は亡き妹を思い出していた。ジルもまたカグラと同じく兄であったのだ。妹は自分が守らなくてはならなかった筈なのにという自己嫌悪を、幾度抱いたことだろう。ジルは掌をぎゅっと握りしめることしかできない自分に再度嫌気がさした。
しばらく校舎から続く林を抜けると二対の塔が見えてきた。その威風堂々とした石造りの塔を眼にしたジルは、此処が噂の男子寮かとごくりと唾を飲み込んだ。
この塔は双子塔と呼ばれ、互いが互いを映す鏡のように出来ていた。そのことから、西側の塔を兄寮東側の塔を弟寮という愛称で分けられていた。一年は基本的に全員東側の弟寮に入ることになっているため、二人はそちらへと歩みを進めた。
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