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 遥か昔、この国ルーベルは今ほどの国土を有している大国ではなかった。内陸に位置していることもあってか、諸外国とのいさかいも頻繁に起こっていた。そんな折にルーベルはひとつの節目を迎えることになる、それは一人の美しい姫君の誕生であった。だが、あまりにも美し過ぎたためか、諸国から多くの結婚の申し込みが後を絶たなくなった。あるとき姫の夢の中に一人の悪魔が現れた。悪魔は姫に求婚したが、姫はそれを受け入れる事はなかった。悪魔は言った「貴女に受け入れられないならば、せめて貴女の側で貴女を護らせてほしい」と。姫はそれを承諾した。姫は他の国からの申し込みにも一切応じる事はなかった。それが引き金になったのか、隣国一の大国の反感を買い、ルーベルは危機的状況に追い詰められたのであった。そしてその戦いにおいて多くの武勇を残した者が今でも語り告がれている騎士ミシェルである。ミシェルは姫の為に戦いこの国を護り、そして今の軍国家へと体制を変えていったのである。

「まあ、てのはこの国に生まれた奴ならたいてい聞いた事のある昔話だ」

 ユーリックは扱く面倒そうに語った。

「だが、これはフィクションだ。本来語られていない、というよりも語っちゃならねえこの国の機密事項にあたる本当の昔話がある」

 二人はユーリックの顔付きが変わったのを見て、ごくりと唾を飲み込んだ。

「まず、騎士ミシェル様は姫君を助ける事ができなかった。姫君を亡くした悲しみと怒りで・・・ミシェル様は気が狂ってしまったらしくてな、この地は一度滅ぼしちまった。そして、全てを受け入れられなかったミシェル様は姫君の亡きがらと共に今でもこの地に眠り続けている」

 しばしの静寂が室内を包み込んだ。

「あの、結局さっきの扉の件とこの話しと何の関係があるのか解らないんですが・・・」

 ジルは恐る恐る聞いた。ユーリックは軽く舌打ちをすると、口を開いた。

「まあ、直ぐには受け入れられないかもしれないが、ミシェル様はつまり悪魔だった訳だ。そんなもんがこの地に眠っている、何も起こらねえ方が不自然だろうが。ざっくり言うとそのミシェル様の醜気的なものを俺等は利用させて頂いてるって訳。まあ俺自身なんでこんなのがあるのかは謎だが、波長のあった物や人はその力をあやかることが出来る。だけどそれはあくまでも醜気だ。へたすりゃ命に関わる物なんだよ。だから軍は秘密にそれを管理している。というより、軍が出来た本当の始まりはそれが原因とも言えるしな」

 ユーリックは口を挟む暇を一切与えず全てを話した。
 二人は信じがたい内容に頭がついていけずにいた。



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