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薄暗い廊下を二人の生徒が歩いていた。静かなそこには彼らの足音だけが響いている。
ふと、銀髪の青年が歩みを止めた。そんな彼を黒髪の青年は訝しそうに見やった。
「何故・・・何故彼は此処に来たのだろうか」
銀髪の青年の凜とした声色からはまるで感情が抜け落ちたような錯覚さえ感じる。
「いきなりどうしたってんだ。お前らしくもない」
黒髪の青年は長い付き合いからか、銀髪の青年の僅かな動揺を感じ取った。
「分からない・・・あの子から感じるものを私は知っている・・でも思い出せない」
銀髪の青年の虚ろな青い瞳は確かな違和感を訴えていた。黒髪の青年はそんな彼を一瞥すると腕を掴んだ。
「セリア・・・どうせ杞憂だ。お前が心配することはねえよ」
彼はそう言って銀髪の青年の銀糸を撫でた。
「ユーリック、君の手は姉上のように暖かい・・・落ち着くよ」
「阿呆が、姉ちゃんと一緒にすんなっての」
黒髪の青年ユーリックはいじけたように顔を背けた。だが銀髪の青年セリアが、そんな彼の行動を理解することはなかった。
「もちろん、君と姉上を同列とは思っていない。君は私の理解者だろう、ユーリック」
「・・・・っ。ああ、俺は絶対にお前を裏切らない。俺の総てはお前の為にある、現在も過去もな」
ユーリックの顔には何の表情もなかった。もちろん表ではというだけだ、彼の奥に苦悩という闇が渦巻いていたとしても、それを知れるのは本人ただ一人だけだったと言えるだろう。
「とりあえず行くぞ。双子にどやされんのは勘弁だ」
そう言って、二人は目的地に向かってまた歩みを進めたのだった。
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