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「ジルが・・・ユラ兄上の養子・・?」
あまりにも予想外の関係だったからか、マルクスは眼が点になり、ジルとマルクスの間には気まずい雰囲気が漂っていた。
「えっと・・・その・・やっぱり初耳だった?」
ジルは恐る恐るマルクスに問い掛けた。
「ああ、ユラ兄上に結婚願望がないことはもとより知っていたから、まさか養子をとるなんて・・・息子が欲しかったなんて思ってもみなかった。それに私と同い年の養子をなんて・・・確かにユラ兄上は家を出て行って以来滅多な事がない限り帰って来なかったし、連絡も面倒臭がってなかなかしてこない方だけれども、仮にも家族なのに報せてくれていなかった事が私にはショックだったみたいだ」
マルクスは少し自嘲めいた笑みを浮かべながらそんなことを述べた。
ジル自身が先程思った事をマルクスも感じていたという事に共感しつつも、何だか申し訳ない気持ちでいっぱいになっていたジルだった。
「だあああっ!!うじうじ考えていても仕方ないし、私らしくないなっ。まあこれも何かの縁さ、私とジルはやはり出会う運命にあったと今確信した」
マルクスはそう言い切ると何だかすっきりしたような顔を浮かべて、いつもどおりの調子を取り戻したようだった。
一方ジルの方は、そんなマルクスに一瞬ポカンとしたものの「そうだなっ」と話しを合わせておくことにしたのだった。
二人はその後本題である新入生代表の挨拶について話し合い、あらかた意見がまとまったところで、そろそろ入学式が始まる時間となった。
ジルはやるべきことが済次第、カグラに文句を言わなくてはと内心穏やかではなかったが、またひとつカグラについて知り得た事に自分では気付かぬ内に喜色を浮かべていたのであった。
「ジル、大丈夫か?」
「何が?」
「いや、何かさっきから百面相してるから」
「・・・・!?」
ジルは咄嗟に両手で自身の顔を覆った。そんなジルの様子を見たマルクスはハハハっと軽快に笑った。
「やっぱり私はジルの事好きになりそうだ」
「・・・俺はお前のこと嫌いになりそうだよ」
こんなにも温度差のある二人が、後々名コンビとなるとは誰にも想像付かなかっただろう。もちろん自身等も。
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