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 残されたジルはというと、状況がイマイチ飲み込めずにいた。

 ジル自身が裏手に来たのは"GloriousKnight"になったことから、新入生代表の挨拶をすることになっていたからだ。そして、おそらく彼らはこの入学式において何かしらの役割を任されている生徒達なのだろうということは推察できた。

「おい、お前。そんなところで突っ立たれてても邪魔なだけだ。こっちに来て座っとけ」

 ぼーっとして立っていたジルを見兼ねてか、黒髪の男はジルを自分達が座っているソファへと促した。

「あ、ありがとうございます。・・・あの・・、お聞きしたいことがあるんですけど・・・」

 ジルはソファに腰掛けながら、恐る恐る尋ねた。

「・・・ちっ・・何だ?」

 面倒臭いと言わんばかりの雰囲気を醸し出しながらも、黒髪の男は答えてくれるようだった。

「はい。えっと・・・俺は新入生代表の挨拶で来たんですが、あなた方はいったいどういった関係者何でしょうか?」

「・・・面倒臭いな・・。おい、ヨハン。お前が説明しろ」

 どうやらヨハンというのは双子の男の方らしく、「僕がですか!?」とあからさまに嫌そうな声をあげたが、黒髪の男の一睨みで了承せざるおえないようだった。

「えっと・・・君はジル・カグラだったっけ・・?」

「あ。はい」

「カグラって家名は聞いたことないな・・・貴族じゃないってことは、家は商家とかそんなとこか」

 ヨハンは独り言のようにぶつぶつ言いながらも、少しずつ説明していってくれた。

「僕等はまあこんなところにいることからも解るかもしれないんだけど、生徒の代表的な存在なんだよ。つまり生徒会執行部なんだけど、君も"GloriousKnight"なら多かれ少なかれ僕等と仕事することになると思うから自己紹介しとくよ」

 ヨハンは一拍ついてから口を開いた。

「僕はヨハン・クラウス軍曹。隣にいるのは妹のエリス・クラウス軍曹。それと君の隣に座っている銀髪の麗人は三年のセリア・ギルベルト准尉、そしてあの面倒臭がりやなのが、僕等のボスである三年のユーリック・マトフ少尉。理解できた?」

 畳み掛けるように名前と階級を言われ、ジルの頭はショート寸前だったが何とか理解出来たのは、やはり"GloriousKnight"になれただけのことはあるのだろう。

「あの、じゃあ俺は皆さんのいるその生徒会執行部に入るのは決定事項なんですか?」

「まあ、九十九パーセントくらい決定事項かな、少尉と僕等双子は三年二年の"GloriousKnight"だし、セリア准尉とさっき出て行ったルイス君は次席だからね。だいたい毎年各学年の"GloriousKnight"と次席が生徒会執行部のメンバーに選ばれることになってるんだ。まあ、拒否権ももちろんあるけど、名誉な事だから入って損な事はないよ」

 無表情ながらも、的確なヨハンの説明は理解しやすく、新たに増えた疑問をジルは問うことにした。

「あの、先程から先輩方の名前の後に言われている階級名っていったい何なんですか?」

「ああ、そっか・・・君にはまだ階級がないからな・・。この入学式を終えた後に皆それぞれ階級が言い渡される事になっているんだ。だいたい入試の成績で二等兵か一等兵になるかが決まる。まあ"GloriousKnight"の君に限っては上等兵の階級が与えられると思うけどね。この階級はこの学校にいるあいだに軍人としての力に見合って昇進出来る。もちろん、この学校を卒業した後にそのままの階級で軍に入れることになっている。もはやここは学校であると同時に軍なんだよ」

 そう言ったヨハンの言葉に野心めいたものを感じながらも、ジルはこの学校のある意味厳しい一面を垣間見た気がした。



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