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「ところで、私の相談本当に聞いてくれる気あるの?」
先ほど衝撃の事実を告げられた一同はそれどころじゃないといった空気が流れていた。
「あー・・・。そうえばそんな話しをしていたんですよね。すみません」
クラウスの謝罪にまったくもってその通りだというようにカグラは大きく頷いた。
「それでその大佐の息子さんが帝軍の試験を受けられるとか・・・」
「そうなんだよ。学力は申し分ない子だからね、合格は間違いないと思っているんだけど・・・」
「だけど?というと」
カグラは思い詰めたような表情を浮かべて口を開いた。
「クラウス大尉、君もあそこの卒業生なら解るだろう。あそこは全寮制なんだよ!?」
「・・・・・?だから何だっていうんですか、そんなこと皆知っていることですよ」
そんなクラウスの返答に、カグラはやれやれといった顔をした。
「君は家のジル君を知らないからそんなことを言えるんだよ。あの子をあんな狼の巣に入れるだなんて、考えただけで恐ろしいよ。だってジル君可愛いから本当可愛いから、というより何処の馬の骨とも解らないやからとジル君が同じ屋根の下で寝食を共にするなんて、心配でたまらないのだよ」
カグラの相談事もといただの親バカっぷりに開いた口が塞がらないクラウスであった。
「カグラ大佐・・・それただ自分が寂しいだけじゃないんですか」
呆れ果てたクラウスだが、仮にもカグラは上官である、罵倒したい気持ちを押し殺していつもの自分を保ったのであった。
「寂しい・・・確かにそうかもしれない。私はこの一年で、帰ったらジル君がいるという現状に慣れてしまったからね」
そうしみじみとはいたカグラを見て、自分が気付いていない内にこの上官は何かしら変わったのやもしれないと思い、クラウスは不思議と胸の奥で巣くう物を感じた、だがそれが何なのかは分かるはずもないのであった。
「話しは解りましたから、とりあえず仕事しましょうかカグラ大佐」
クラウスはひとつ収穫があったとは言っても、結局のところはいつもと変わらないあまり実りのない話だったと内心思いながら、補佐官としてこれ以上カグラに仕事をさせない訳にはいかないと、仕事モードに戻ったのであった。
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