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帰宅したカグラと客であるバルトルを出迎えたのは、可憐な一人の美少女だったと後にバルトルは言う。
「お帰りなさいませ。お父様」
そう普段では考えられないような言葉を、微笑みを浮かべながら述べたジルの中に黒いものが渦巻いていたのは仕方のないことだろう。
ちなみに他人の前でジルはカグラを父と呼ぶようにと約束事を交わしていた。
「やあ、ただいま。私の愛しい子」
カグラはそんなジルの内心を知ってか知らずか、まるで絵に描いたような受け応えをしたのだった。
「・・・ちょ、おいユラ。こいつは一体どういう事なんだよ」
バルトルはそんな様子に一瞬ほうけていたが、すぐに湧き出た疑問をカグラに投げ掛けた。
「どういうこと?とは何のことだいジゼルさん」
「だからよ。俺はジルって餓鬼に会いにきたはずなんだが、何で女の子がいるんだよ!・・・まさかっ・・お前ついにいたいけな女の子にまで手をかけっ「とりあえず、黙ってくれるかな。本当に君はどれだけ人を悪人だと思ってるんだよ」・・・勘違いされる行動をとってるのはお前だろうが!!」
バルトルの止まりそうにない妄想という名の勘違いを、カグラは無理矢理黙らせた。
そんな二人の様子を見ながら、何の話しをしているんだとジルは訝しそうに伺っていた。
「はあ。だからさ、この可憐な子が私の息子になったジル君なんだって」
「・・・・嘘だっ!?こんな可愛い十五歳の男がいてたまるかっ」
バルトルは本人を眼の前にして、かなりジルにとっては気にしていることを直球で言ってしまったのだった。
あまりにもショックだったのか、ジルは茫然としながら、カグラがこんな格好をさせるからだとぶつぶつ呟いた。
ジルにとって女顔なことと背が低いことはコンプレックスであり、逆にそのせいで性格は男らしくもあったのだった。
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