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カグラが去った後シャワー室で頭から冷たい水を浴びながら、ジルは冷えた頭でとんでもないことをしてしまったと顔を青くして佇んでいた。
男娼を使い捨てしているとしかとることのできないその言葉に、カグラへの怒りが沸いたのは紛れも無い事実だった。だが相手は客だ、ジルが意見していいはずがなかったのだ。価値観なんて捨てなくてはならない、店主に初めに言われた言葉の意味をジルは理解したのだった。
「・・・店に迷惑をかけてしまっていたらどうしよう」
ジルは大きな溜め息をついてシャワー室を後にしたのだった。
それから一週間がたち、ジルは猫被りをしながら業務仕事のように淡々と客をさばいていた。先輩達が言っていた慣れたら何も思わなくなるものだという言葉を確かにそうなのかもしれないとジルは思っていた。
またその間ジルが求めるような客は表れなかったのであった。
自分は本当にこんなことをしていて家族の敵を見つけることが出来るのか、あの不可思議な現象の真実を知り得ることが出来るのか、ジルは悩んでいた。
あのベルが鳴るまでは。
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