「先輩、」

風紀副委員長としての仕事をしに部屋に入ると、中はピリピリと緊迫した空気を漂わせていた。

「……至急鎮圧に向かえ。医療班はどうなってる」
「準備、完了しました!」
「よし」

普段仕事をしないことに定評のある彼も、一度暴動がおこれば別人のような真剣さを見せる。それがなんだか私の知らない人のように見えてなんとなく切ない。いや、私が切なく思うなんて烏滸がましいというか、なんというかだけれども。
……私は、フィエーロじゃないもの。
バタバタと部屋を出ていくフィエーロメンバーを見届けてから、彼はようやく私に気づいたように声を掛けてきた。

「オルガ。なんだ?」
「すみません忙しいときに。書類をもってきました」
「……まじかよ」

ここからここまでが一週間後までの資料。これが一ヶ月後。といいながら大きな机の上に能力で浮かせた書類を置いていく。それを死んだ魚のようなうつろな目で見つめる先輩。そのさまを見ているとたまに申し訳なく思うが仕方ない。これがフィエーロ総司令の定めだ。

「ところで、今日提出の書類はどうなってますか?」
「……8割」
「本当ですか?」

本当は今日じゃなくて明日までの資料。それを敢えて黙っているし相手も気づいているかどうかなんてわからないけど。ひらっと机の端に追いやられていた紙を取ろうとするとぎゅっとそれを押さえつけた。

「ごめんまじごめん7割!!」
「……もう」

まあ、その調子なら今日中には終わるだろう。文字列は7割よりちょっと埋まっていたように見えた。ふう。ため息をついて一礼し、部屋を出る。フィエーロのメンバーでない私は本来ここへの入室は認められていないから。

(私は、何?)

そもそもリベラメンテ側の思想を持つ私が、あろうことかフィエーロの総司令に恋をして。だってそんなのしらなかったんだ。中等部に入ったらリベラメンテに正式にはいろうかと思っていたのに。彼を裏切るなんてできなかった。
裏切りでもなんでもないよ。と私の中の、小さな私が言う。
私は彼のただの部下で。後輩で。ただそれだけで。

「つらい、な」

小さく、声に出した。吐き出したら楽にだす気がしたけどひとりぼっちの言葉は余りにも弱くて、私の思いみたいで笑った。
先輩に好きな人いないのかな。先輩のことだから、私なんかよりもっと可愛い女の子が好きなんだろうな。ちょっとシスコンだから……金髪の綺麗な、天使みたいな子かなあ。クリスさんみたいな女の子に、私が勝てるはずない、か。
自己嫌悪。可能性はある。先輩忙しいし誰のことも好きじゃないかもしれない。でも。

でもね。

「わたしが好きになっていい相手じゃない、んだ」

私の思想からかんがえても、釣り合わないという意味でも。いや、釣り合うっていうか、それって私付き合うことかんがえてない? 馬鹿じゃないの? 私なんかが、付き合えるわけないのに。

(……灰色だ)

黒でもない、白でもない。両方の色をもった制服を身にまとって。どちらにも足を踏み入れることができない。そんな曖昧な、私。曖昧な、色。
どうしてここにいるのかなんて何百回も自分に問うた。それでも答えが出なかった。ここにいたいのかいたくないのかもわからない。ああ、もう。

しゃがみこんだ私に、気づくものも、いない。

2011/09/27 灰
オルガさん!

時間やばいですね! 時期は本編始まる前ですね!
ちょっと今気が動転してるのでちょっと見直しできないですけど!

オルガさんはハロ/ハワユやと思います。終わり!






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