もう2時間近く、布団の上にいる。動け。動き出せ、と脳はさっきからずっと命令しているのに、何が気に入らないのか身体がちっとも反応してくれない。腕を上げようとしても、首を動かそうとしても、メールの受信音をかき鳴らしているケータイ電話を取ろうとしても、ちっとも動いてくれない。まるで金縛りみたいだけれど違う。
何にもしていないのに、酷く疲れてしまった。そう心が錯覚しているらしい。

呻いてみる。言葉を忘れてしまったのだろうか。おかしくなって笑ってみたけれど、すぐ表情筋が疲れてやめてしまった。ああー。目を閉めるのも、開けるのも、億劫だ。半開きにした目からは、部屋の様子も見えない。つけっぱなしにしているテレビを消したいけれど、リモコンがどこにあるのかもわからない。
昨日も、一昨日も、何もしていない。本当に何も。ゲームもしてない。アニメもドラマも、見ていない。漫画や小説も、読んでない。お散歩でもすれば気が晴れるのだろうけれど、もう外に出る気力もなくなってしまった。

このままじゃあ、だめだ。
そういえば、この前、友人と遊びに行こう、って話になっていただろうか。その連絡なのかもしれない。そう思ってさっき届いたメールを見ようと手を伸ばして、画面を確認したら、つまらない迷惑メールだった。
この前あの友人と話したのは、よくよく考えたら一か月も前のことだった。

馬鹿馬鹿しいな、とケータイを投げた。ゴン、と音を立てて、壁に跳ね返って画面を下にして、落ちる。

2015/03/10 蜘蛛の糸






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