部屋に入ってカーテンを開け放つと、まばゆい光が全体に降り注ぐ。部屋の主は小さく呻いて光に背を向けて、毛布に顔をうずめて見せた。
このまま放置していてもいずれは暑さで起き上がらざるを得なくなるだろうけれど、そこはあえて毛布を引き離す。ぎゅうっと抱きしめているそれを引っ張り合っていると、「このおにー」と呂律の回っていない声で言われた。

「鬼じゃないよ。ほら起きて。ご飯できているから」
「やぁだぁ……」
「子供みたいなこと言ってないで」
「子供だもん」

全く、都合のいい時ばかり子供のふりをするのだから困ったものだ。人間が子供で居られる時間は、人生でほんの少しだけなのだから、その時間が許す限りは子供で居てほしい、というのが、これを語る者の考えではあるのだけれど。

「ボクの朝ごはんを分けてあげる。今日は蜜柑。好きでしょう?」
「好きだけど、さあ」
「じゃあ何がいいの」
「現金」

布団から手を放して、前髪がひっくり返って丸出しになっているおでこを、ぴんと指ではじいてやった。そんなことを言う子供がいるか。いいや、子供だからだろうか。
そんなことを言っていたら、もうそろそろ9時になる。いくら休日だからと言って、これ以上寝させるわけにはいかないだろう。

「嫌なの。起きたくないの」

ぎゅう、とボクから取り返した布団を身体で包んで、また日の光から逃げようとする。首に巻きついてしまいそうな寝癖のついた髪をゆっくりと、ボクは撫でた。

「大丈夫。嫌なことなんてないさ。今日キミに起こるのは、素敵なことばかりだよ」

身体ごとこちらに向けて、ようやく此方を捉えた、深い色の瞳に、日の光が散る。ほら、綺麗だ。とても素敵だ。

「おはよう」

ほら、お早く起き上がって。素敵な一日をボクと過ごそうよ。

2015/03/09 病床






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