近くでアラームが聞こえる。

ぼんやり数秒間それを聞いていたけれど、ようやく目を覚ますことに決めたらしい私は枕の下に迷子になっていたケータイ電話の電源ボタンを押した。7時。普段だったら目覚める時間だが、今日は生憎予定はないので、アラームは仕事の仕損になってしまった。切り忘れていた私が悪いし、彼は自分の役割を全うしただけだというのに酷く腹立たしい。
もぞり、と自分以外の体温が動いた気配がして、私は隣を見やる。

「もう、朝?」

そうぼんやりとした口調で、私以外の体温は言う。私よりもずっと眠そうだ。朝が弱いという話は聞いていたが、こんなに辛そうにするとは思っていなかった。だからいつも、寝癖が酷いまま私と対面する羽目になっているのだろうか。生活の一部に触れたような気がして思わず笑みが漏れた。先ほどまで呪っていたアラームに、祝福あれと祈るくらい。

「まだ眠っていていいよ」
「そうなの? ……でも、お腹すいたかな」
「わかった、ちょっと待ってて」

朝食は何がいいだろうか。ごはん? パン? それともシリアル? 果物は、林檎と蜜柑くらいならあるけれど、それ以外が好みだったら買いに行かなければ。
作ってくれるの? と小首を傾げるその姿が幸せで堪らない。なんだってしよう。貴方のためだったら、貴方が望むなら、なんだって。

大げさな愛の歌みたいに、貴方が望むならこの世界すべてだって手に入れてみせる。
そんな微睡のような緩やかな幸せや夢に、少しだけ浸らせていて。

2015/03/05 あのさ。独りで死ぬのは厭きたんだ。






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