「そうして、ヘンゼルとグレーテルはお父さんと幸せに暮らしましたとさ」

めでたしめでたし。そう言ってベラは絵本を閉じる。

「次は？」
「ローゼはまだ起きてるの？　もう次はありませんよ」

くすくすと苦笑いを浮かべる。その隣を見るとクルトはすでに眠っていた。今日はここまで。なんだか寂しくなってベラのネグリジェの袖を引っ張る。

「じゃあお歌！　お歌歌って！」
「しかたありませんね……」
「いつものあれがいい。お月様の歌」
「ローゼは本当にあの歌が好きね」

すうっと息を吸う。その口が紡ぐのは、シンプルだけど、私には少し難しい愛の歌。少し私も口ずさむけれど、能力を使っているのかな、なんて思うくらいリラックスしていき、寝たくないのに、全部聞きたいのに、歌いたいのに、ゆっくりと落ちていくまぶたを上げることができず、気がついたら眠っていた。



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