頭が痛い。

「……」

目覚まし時計に手を伸ばすと、時計の針はてっぺんと真下を指していた。どっちだろう、と軋む身体で、同じくらい軋むベッドの上に腕をついて窓の外を見ようとしたけれど、どうせこの季節どちらでも同じようなものだろうとやめた。何一つ身に着けていない自分。そして同じように何一つ身に着けていない目の前の男の薄い瞼は、堅くも緩くもなく閉じられている。
……ゆっくり寝たのはいつ以来だろう、と考えてみたけれど、だいぶまえのことまで思い出さないといけない気がしてやめた。それにしても、自分にしては寝すぎてしまったようで頭がガンガンする。偏頭痛、ってやつだっけ。ふああ、とあくびをしようとしたら、目の前の赤毛が揺れてかみ殺す。

「おはよう」
「ん……」

薄く眼を開いたその向こうには、嘘みたいに明るい黄色の目。こんなふうに目をゆがませるのは、期限が悪い時だけだ。でもどうやら、どうして朝までいるんだよ、って意味ではないようで、ただ単に隣の人間が動いたことで起きてしまったのが不服なのだろう。疲れさせた原因の一部は彼にあるのだから、それは正しいと判断する。
と、彼は眠そうな目をこすって同じように時計を見、それからこちらの背中というか、肩のあたりを腕で巻き込みながら、もう一度ベッドに倒れこんだ。

「……仕方ないなぁ」
「あと四、五時間は寝れる」
「食堂が閉まっちゃう」
「別に、そのときは」

なんだか下世話なことを思っているみたいだから、「もう」と言って彼の口に手をやった。言わせない。そんな恥ずかしいっていうか、下らないことをよく口に出そうと思えるものだ。ため息をついて、目を閉じた。ずきり、と動くたびに頭が痛かったけれど、彼が無意識に、だろう。そっと何度も頭をなでてくれたから、なんだかそれに、起きておこうっていう気持ちも頭痛も吸い込まれるように、緩やかに、不思議なくらい緩やかに、また眠りに落ちた。

束の間の夢を見よう(2013/10/02)
title by 星葬
皓賀と誰か





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