ずっとあこがれだった。

可愛らしい容姿も、笑顔を与える歌声も、少し危なっかしいダンスも。
誰にでも見せてしまう笑顔も、見ず知らずの人を本気で思い流す涙も。

だからだろうか。私がわけあって不利な状況に立たされて事務所を追い出される前にも、彼女は私を恨まず、真っ先に、当たり前のように私のことを心配した。いちごはどうなの、というと笑っていた。

「わたしはいいよ」

アイドルを辞めると私に告げた日、彼女は事務所の屋上のフェンスにもたれてそういった。「やりたいことは全部叶っちゃった。みんなに私の歌聞いてもらえたし、好きだよって言ってもらえた。自分にできること、ちゃんとあるってわかったよ。だからきっと、歌じゃなくても、誰かを楽しませることが私には、できる」そういってこちらを向いて、いつも通りの明るい笑顔。ふわりと吹いた風が、彼女の色素の薄い髪を巻き上げて、弄んで、去って行った。ただそれだけなのに、なんだか私の目には女神のように映った。

その華奢な手で、私の手を取った。彼女の運命を捻じ曲げてしまった汚れた手を。
まるで宝石でも扱うかのように、やさしく手に手を重ねた。

「いつも守ってくれていたんだよね。わかっていたよ、ごめんね。……ありがとう。れもんが私のパートナで、本当に良かった」

アイドルだ、と思う。
……彼女こそが、本物だ。

多分君が居れば世界はまわる(2013/09/24)
title by 星葬
いちごのことが好きすぎて周りが見えなくなるれもんが書きたかったけど書けなかった。





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