※本編の軸ずれてます二次創作です二次創作。
 なんか作者も時系列よくわかんないしちょっとえっちぃし百合臭い。注意。

























「……何をするつもり?」
「ふふ」

答えずにベッドの上に横たわるボクの上でエナトは微笑む。さっぱりなにを考えているのかわからなくて、真顔になろうか同じように微笑んで見せようかしばし悩む。結局無表情のまま、「おしえてよ」とだけ言っても、エナトは微笑んだまま口を開かない。

「用がないなら、どいてくれるとうれしいな」
「あら、用なら、あるよ」

唇を開いたと思えば、顔が近づいてくる。まるで鏡に急接近したみたいだ。でも、頬にかかったボクよりずっと柔らかで色素のない髪と、ボクよりずっと白い肌、血の色が透けている銀の目と、紅を引いた唇が、これは鏡ではないと教えてくれる。

「エナ、ト?」
「なあに?」

なあにはこっちの台詞だし、これはいったいどういうことだ、とおもいつつも目を閉じることができない。危害を加えるつもりは、多分ないだろう。……もちろん多分だけれど。目、透き通った血の色。吸い込まれそう。なんて思ってた。

(しかもなんか、なんか、いい匂い、する)
(睫長い。って、ボクもなのかな)

ぬるい体温が唇に触れて、少し粘着質な何かが残った。

「ああ、紅がついちゃった」

唇を重ねることがなにを意味するのかは、ボクだってわかっているつもりだし、彼女だってわかっているだろう。それでも「どういうことかわかってる?」と訊かずにはいられなかった。相手からは同じ事を訊き返された。話にならない。

「ドリラは肌か白いから、口紅がよく似合う」
「それはキミでしょ、エナト」
「ねえ、ドリラ。知ってる?」

なにを、と顔を上げた瞬間。これはやばいと悟る。目の前の少女が、新しい遊びを思いついた子供のような表情をしていたからだ(ような、もなにも、そういえばそうなのだけれど)。もう終わりだと思っていたボクが身じろいだその隙に、横腹の近くに置いた右手が、ボクのシャツの中に進入してきた。

傷跡って、『感じやすい』らしいよ?

これまでの、口元だけの微笑じゃなく、にい、と目を三日月型にして笑う彼女の細い指が、ざりっ、と傷口に触れて。

「っ、」
「うふふ」

まだところどころかさぶたの取れきってないその傷は、楽しそうに触れる彼女がつけたもの。「やめて、エナト。だめ」そうやって彼女をどかすために手を伸ば、そうとした。のに、届かない。腕も足も、まったく動かないわけじゃなくて、まるで体のあちこちを縛られているみたいに少しだけ動く。でも絶対に、動かしてもエナトを突き飛ばすなんて事はできないし、さっき試してみたけれど、吹っ飛ばすこともできないみたいだ。そうだった、エナトは、悪趣味なんだった。

「だぁめ。やめない」
「キミが、してるんだね?」
「そうだよ」

悪びれなく言うさまに少し頭が痛くなりそうだ。どういうことかわかってる? ってまた言いたくなったけれど、きっとそっちこそわかってる? って訊いてくる。それくらい、ボクだってわかってる。だからこそ。

これ以上はいろいろと、だめだ。

「エ、ナっ」

名前を呼びきれなかったのはボクのせいじゃない。まるで口封じのように、エナトが傷を舐めたからだ。ぞわり、と全身の肌が粟立つのを感じる。一度だけじゃない。彼女の言葉を借りるなら、『感じやす』くなっている傷跡は、彼女の吐息だけでも、そう、なんというか。あれだ。しかも、もがいてももがいても思うように動かない体。理由もないのに涙が出てきて、呼吸も乱れる。

「ぇっなぁ、……ッは!」

予期せぬ高い声が出て、びっくりしてそれ以上声が出ないように唇を噛み締める。お構いなしに艶かしくエナトの舌は動いて、もうどこがどうなのかわからないけれどむずがゆくて、頭が熱くて、どこか溶けてるんじゃないかと思う。だって、涙が止まらない(待ってまって、これじゃあまるで、あれみたいじゃないか!)。

「じゃあ、終わる?」
「ッえ、わっ」

体が自由になって。つまりもがいていた動きがそのままできちゃったりするわけで。

「痛っ」

思い切りベッドから転がり落ちた。

「大丈夫?」
「……さ、触らないで」

ふわり、と触れたエナトの指はまるで氷みたいに冷たくて。ボクの頬はそれと反対に、まるで炎みたいに熱い。だからこそその冷たさがすごくわかるわけで、なんだかそれが、すごく、すごく。

振り返ってみたエナトは、おとなしくちょこんとベッドの上に座ってる。そう、まるで猫みたいに。「どうしたの」「何かあった?」みたいな顔をしてる。なにを考えているのかさっぱりわからない。

「ねえ、」

ぼやけた視界でもう一度伸ばしてきた手を、今度はよけて立ち上がる。乱れた呼吸は随分ともとに戻ってきた。それでも、体の熱は、まだ下がりそうにない。外に出たい。そうだ外に出よう。縺れそうになる足を動かしてドアに手をかけると、「どこに行くの」とたずねてきた。もちろん無視。

(こんなの、絶対変)

名前を知っているようで知らない感情。感覚。
頭も体も思ったように動かなくて、廊下で蹲った。

「……意味、とか、そんなんじゃ、ないでしょう、これ」

呼吸の中落ち着かせるためにつぶやいた自分の声は、エナトのそれに、よく似ていた。

紅*(2013/02/12)
8(山なし)0(オチなし)1(意味なし)
ラルドリよりも恥ずかしくないのはエナトだからだと思う。

あとこのドリラ、らしくないね…。





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