MEMO

・小学4年生「blacktwin」より

「なによ…これ…」
クモの巣がそこらじゅうにあって、なんだか変な感じ。
とにかくでる。
「なにこれ…何が起こってるの…!?」
もう一度、呟く。と、誰か知らない人が答えた。
「その家の人、引っ越したよ」
目がとろんとして、もわもわしてる口調でそう言った。怖い。なにこの感じ。呪われてるみたいだよ。
その瞬間、がぼっと何か大きな袋に入れられた。
「きゃー!」
なにか、袋の中に入れられてもわかる、キラキラしているものが見えた。頭の中がビデオの巻き戻しみたいに戻っていく…。そうだ。私には、大事な役目があった気がする。そして私は、わたしは何かを見ていた。そう、雨が降っていた。びしょ濡れの、キラキラ光った何かを持つ少女がいて、何か叫んでいた。

――オモイダスナ――

なんだろう。何かが頭をよぎった。でもその時の私には、少女の言葉を探していたその声は届かなかった。
『新菜様ー!』
何かが聞こえた。その声を追う。誰が、どこで?
『新菜様ー!!』
次は大きく頭の中で響いた。にい、な? そう言っているのか。ニイナとは誰だ?

――オモイダスナ――

今度はその声も頭に響いた。その時私はみたのだった。少女が持っていたあの光が見えたのだった。頭の中がぐるぐる回る。「なにこれ」といおうとしたが、口が開けない。目も開けない。誰か、私じゃない私が入ってくる。漠然とそう感じた。そっと、目を開ける。その瞬間、目に見えない様々なものが入ってくる。頭痛とめまいがわたしを襲う……。そうして私は思い出したのだ。自分が誰で、何をすべきかを。


・小学5年生「SFR」

「晶ぁ!!」
「星《ラティッツ》ッ!!」
晶の体が傾いで、落下を始める。
「そこォ!! ちょっと待ったぁ!!」
びくっ。ライさんでも琥珀さんでも、男子二人でもない声がした。気がつくと、明の落下も止まっている……。
「はー……」
コハク酸と、ライさんが頭を抱えている。
「とーう!」と威勢のいい声。見上げると少女が落ちてきた!?
たんっ。軽い音を立てて、黒髪の少女が地面に立つ。
「その子の変わり、あたしがやるよ!」
その子が手を上げると、何かが出てきた。
「風! 我に従い 結び 鎖となり 彼の者を 縛れ!」
シュンッ。一瞬、男の人たちが消えたように見えた。が、うっと苦しそうな声を上げて、倒れる。
「な…なに…」
「皆さん、姉さん、今のうちに逃げて!」
「ええ、そうするわ」
姉さん…ということは、この子は琥珀さんの妹ってこと?
「グラード!」
しゅあああ、と眩しい光に包まれた。
琥珀さんがパチン、と指を鳴らす。と、あっという間に王宮についていた。

・小学6年生「」

ピピピピ…ピピピ…ブッ。
「もーうるさいなあ…って…きゃあああああ!?」
あたしは叫んだ。時計は8時20分を告げていたからだ。
「嘘でしょ!? あと10分しかない!!」
急いで髪を寝かせ、セーラー服を纏う。朝ご飯も食べずに家を出た。
「おはよう、柚子!」
「おは…って、なによぉ、その髪の毛」
柚子はくすくす笑いながらあたしの髪の毛に触る。
「まるで鳥の巣や」
「うっ、るさいなあ」
「ほな、いこ」
「うん」
そうして、あたし……真紀と柚子は、中学に向かった。その時、あたしたちは既に巻き込まれていたんだ。あの忌まわしい事件に。

中学1年生「我ら探偵倶楽部」

「ルカ! ルカ大丈夫!? 死ぬなああ!!」
「いやいや死んでないし、死なないだろうから」
……?
「あ、ほら起きた」
……私の頭は20%しか働いてない。
「きゃあああルカ、よかったよお!」
ぎゅう! っと抱きしめられた瞬間、私の頭の処理能力はもとのそれを追い越した。
「……わ、たし、何時間眠っていた!?」
「そんな大声出さないでよお、せいぜい、2時間くらいかな…」
「私、出てくるっ!」
「まってまってまって! 今すっごい吹雪なの!」
ふと窓の外を見ると、ものすごい吹雪だった。これだと能力を使うこともままならないだろう。
「……今から言うこと、本当のことだからよく聞いて」
ベッドの上に座る。烏とハレは、私の真剣な声に驚いたのか椅子に座った。夢の内容を話すと、烏は口を開く。
「……つまり、吊り橋が誰かに切り落とされた、ってことか?」
「その可能性が高い。私の夢、外れたことがないから」
「誰が落としたかは、見てないのか?」
「……見てない」
ふう、とため息をついて、烏は腕を組み替えた。

・中学2年生「雷の調べ」

少女は、椅子の上でそっと目を開けた。
(また、あの日の、夢)
あれから、いく度となく見た夢。森実杏奈はため息をつく。
「今日は、あれの日か」
『NSS』から新たな任務の連絡があるはずだ。
今現在世界を破滅に導かんとする『悪』。神のつくりし奇跡である『コア』を悪利用する我らからすると『異端者』と、それを止めるために、『悪(コア)』に対抗する『神(コア)』を持つものを集め、教育している『NSS』に所属する『異端審問官』は、世界の裏側で日夜火花をちらしている。
その『神(コア)』を持つ者は、神に見定められ、愛された子。杏奈はふんっと、自虐的に笑った。何が、愛された子だ。戦うだけの存在と認められ、何が愛だ。
「……さて。今日はどこに行こうか」
どこにだって行ってやる。全ては、神の意のままに。

中学三年生「」

着慣れない服は寒い。
真っ赤な軍服はやや袖が余り、整備している銃は冷たくて重い。グローブのつけられない繊細な作業。感覚が無くなりそうだ。
「さむー……」
ほう、と指に息を吐くと、テントの中にいてもそれは白いそれになって消えてく。
「さむいなー」
隣に来てマグカップ2つを持って微笑む青年。茶色の髪と茶色の目。此処の治療担当。
「レオ……」
まだあどけなさが残る顔。カップ一つを渡してからわしゃわしゃと頭を撫でてくる。「のめ」
相変わらず仏頂面。
彼と入れ替わりにもう1人、男が入ってきた。「起きてて良いのか? まだ辛そうだぞ」
うちの隊長。アベル・ブローム。
「……大丈夫ですよ。一刻も早く此処を攻略しないと、後が、」
「そうじゃない」
中に入ったココアを見つめてた目を、アベルに戻す。
「え」
「お前はもっと自分のことを大切にしろよ」
思いの外真剣な目。頼れる人とはこのような人なんだろうな。
「隊長命令だ。休息も仕事のウチだぞ」
「分かりました。もう寝ます」
そういって、ココアを飲み干し、薄いブランケットの中に潜り込む。「後は、お願いします」
「ん」
まもなく銃を整備する音が聞こえてくる。

高校一年生「」

「あー……朝だ……」
雑用ばかりさせられたせいでだるい。相変わらず走るのは苦手だ。少しは体力ついたけど、ちょっとした連絡に走り回されるときつい。……こんな所でケータイとか無線のありがたさを知ることになるとは思わなかったが。
ふと、下を向く。
つるつるの床に映るのは、
(わたし、だ)
魅白よりも背が低く、
魅白よりも童顔で、
魅白よりも体力が無くて、
魅白よりも友達が少なく、
魅白よりも人見知り激しい。
(そんなわたし)
でも、此処なら比べられないって思ってた。背が低く、童顔で、体力無くて、友達少なくて、人見知り激しい。ただそれだけになった。此処なら、比べられない。だからこそわたしは、魅白の姉じゃなくて、士官候補生として此処にいれた。いや、わたしはわたしなんだけど、気持の違いというか、でも、でも。
(魅白、会いたいけど、会いたくない……)
きっと上手くやっているだろう。
彼女なら、わたしと違って。
邪魔したくない。
そう思いこんでいた。
(でも、本当は、)
邪魔されたくない。
わたしがわたしでいれる時間が、空間がほしかった。
(こっちにきていてほしくなかった)
そっと目を伏せて、おもった。
かたん。小さな音が外でしたのに、気付かないふりをして眠った。


・高校二年「真白の黙示録」

「それが本当なら、ドリラは……」
「女じゃ」
会議室の外で、ボクはその単語に心臓を掴まれたような緊張みたいなものを覚えて、思わず目を閉じて首元をおさえる。ため息。少しでも落ち着かないと。ドアノブに当てた手が震えている。あれからボクは少しの間眠り、目を覚ましたら自分の部屋のベッドの上だった。誰が運んでくれたんだろう。きっと重かったろうに。まあきっと消去法で考えてラルさんだろうから、重さなんて気にならないと思うけど。足はまだ使い物にならないままで、今のボクは車椅子に乗っている。部屋に来たソリスの話だと、1日か2日で普通にあるけるようになるという。
不意に気配がして振り返るとノースがソンと一緒にこちらに向かって歩いてきていた。
「ドリラ」
「どうしたの?」
できるだけ平然を装ってほほ笑みかける。が、彼は真剣な表情のままだった。ボクの真ん前まで歩いてきて、じっと見つめてくる。オレンジ色の目の中に、ボクが映り込んだ。座ったままのボクとノースの視線が合う。徐に開かれた唇。
「僕、ドリラが女の子でも男の子でも、どっちでもいいよ。ドリラっていう君が、僕は好きなんだ」
「……ありがとう、ノース」
うつむいた彼の手小さな手をそっと取る。と、頭の中になにかが流れ込んできた。不安。葛藤。少しの恐れ。
『僕がもっと大きかったら、僕がもっと強かったら、もっとドリラの力になれたのかな』
『もっと大きくなれたら、もっと強くなれたら、僕はドリラの力になれるのかな』
「……ノースは、優しいね」
「え?」
だんだんと分かってきた。これはきっとノースの声なのだろう。多分きっと。そう言って頭をなでると、顔を上げた。『僕は優しくなんてない』。流れてきた言葉にそっと首を振った。
キミは優しい。誰かに対して、こんなにも優しくできるなんて。ボクだって誰かの力になりたいけれど、いつも自分のことばかりしか見ていなかった。ボクの世界は小さいから。でもノースは、ノースにとっての世界は、《エポ》そのものなのだろう。ボクはそっと帽子を取って、ノースに被せた。
「……行くね」
「うん」
手を振るけれど、小さくしか振り返してくれなかった。






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