素晴らしく憂鬱に生きています

【夜久衛輔の話】


「へぇえええ!夜久あかりちゃんを祭に誘ったのかへぇええええ!バレー部でも周らないか?ってお前根性無しだなー」

クッソ殴りたいにやにや顔の黒尾。しょっぱな「友達と行く約束してるんです」と断られたんだよ察しろ。「じゃあなんで行けるようになったんだ?しかもバレー部でって」あいつバレー部でも周りたいって言ったから、じゃあ友達と別れた後バレー部に合流すればいいって言ったんだ。それならって頷いて、今に至る。

「あかりちゃんバレー部好きすぎか。徹に自慢してやろ」
「お前及川兄に嫌われるぞ」
「返信帰ってきた」
「早っ」
「『俺もあかりとお祭り行く約束してるし!』妄想か?」
「及川兄の扱い雑すぎだろお前」
「『保護者付きだけど』保護者…ああ、岩ちゃんか」
「父親同伴か」
「父親…しっくりくるな」

あかりはいいけど及川みたいなクソ息子いらねぇよ、って言いそうだな。「えっとなになに?『ちっさい時は岩ちゃんがあかりと手を繋いでた、今思い出しても悔しい』だってよ」本格的に保護者だな岩泉、似合ってるけど。

「夜久、岩泉には嫉妬しないのか?」
「保護者過ぎて」
「ああ、なるほど」

現に岩泉は「クソ川より俺の方が兄貴っぽい」とか言ってるし。「なに、岩泉と連絡取ってんの?」まぁな、及川兄よりは気軽に連絡取れる、拗らせシスコンじゃないからな。

「父親ポジションっぽいけど岩泉もシスコンだよな」
「あいつらあかりちゃん好きすぎだな」
「お前もな」
「はははは」

あいつにーちゃん何人居るんだよ、なんて黒尾が笑った。ほんとにな



◇ ◆ ◇



『夜久ちゃんあかりとデートしないの?』

まぁあかりクラスの友達と夏祭り行くみたいだし?宮城は俺(と岩ちゃん)と行く約束してるしね!
きっと向こうでドヤ顔してるであろう及川兄、テンション高いなお前。ははは、と乾いた笑いが零れた。一応その後一緒に回る約束してるけどな、とは言わなかった。言ったら多分小言が始まる。「あ、祭りじゃないにしろデート誘うとか許さないからね夜久ちゃん」ドスの効いた声だった。

「妹離れしないと大変だぞお義理兄さん」
『殺すぞ』

殺意しかない声色に流石に背筋が凍った。こいつ妹に冷たく当たってた時代があったなんて嘘だろって思うレベルだ。「お前さ、あかりと仲のいい奴全員目の敵にしてるけど、岩泉はいいのか?」素朴な疑問、いくら幼馴染であっても『いや岩ちゃんでも許さないから。譲歩はするけどそれ以上の事は許さないから』それ以上ってどれだよ。


『え、抱きしめるとか?』
「それお前じゃなくてあかりも嫌がるだ…あ、」

うちのでかい犬を思い出した。獅子って名前の犬、あいつ誰にでもフレンドリーでしかもあかりと同じクラスの、言ってしまえば一番の友達ではないだろうか。『ちょっと、あってなに、まさか』あ、いやちょっと待て。

『ちょっと誰、そんな不埒な事するヤツは』
「甘えん坊の大型犬」
『…ぷっ、はははは!夜久ちゃん俺が犬に嫉妬すると思ったの?面白いなぁー』

大型犬という名の犬だけどな。『夜久ちゃんの中の俺ってどんだけ心狭いの?』お前笑ってるけどかなり心狭いと思うぞ。これで犬(実際はリエーフという名の人間)に嫉妬しようものならドン引く、もうかなり引いてるんだけど。『でも俺久しぶりの再会で抱きつかれた時以外であかりと…あ、でも父さんからあかりを奪った時…』ぶつぶつと何かを言う及川兄、やっぱり犬に嫉妬とかやめろよ?犬じゃないけど。


『…ま、いいや。って言うか聞いてよ!夜久ちゃんこの前烏野と』

あー、なんかすごい長くなりそうだな。今日は寝不足決定か…返事しないと「ちょっと聞いてる!?」とか言う奴だし…うん、黒尾以上に面倒な奴だ。『飛雄ちゃんの事だけど』あ、はいはい。適当に聞いてやるよ。






『ていうか夜久ちゃん聞き上手だからって俺が絆されると思わないでよ?』
「思わねーよ…」



◇ ◆ ◇




「あかりー!」
「リエーフ君おはよう。朝から元気だね」

大きな巨体があかりの背後に影を作ったかと思うと長い腕をあかりの首に回す。「よーしよしよし」なんてあかりは気にせず頭の上に乗っかった灰色を器用に撫でまわしていた。「相変わらず及川小さいなー」「んでリエーフでけぇな」あかりとリエーフのクラスメイトのバスケ部2人組がそんな事を呟く。「みんなおはようー!」おっとりめの女子が手を振る。


「あそこは和むなぁ」
「……」
「どうした?夜久」
「いやぁ…」

俺らもなにも疑問に思わないけど、あれ。なに、どれ?いやだから…。ふっつーにあかり抱きしめてるけど誰も何も言わないよな、アレに関しては。大型犬リエーフを見る。


「あれペットだしなぁ…」
「最初こそは口出ししてたけど慣れると…」

何故だろうか、本当に犬にしか見えない。「あれ徹がみたら発狂するんだろうな」黒尾が笑った。一応犬には嫉妬しないらしいぞ。慣れてしまった光景を眺めた。



犬(リエーフ)と、その飼い主あかり
定着しつつあります

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