素晴らしく憂鬱に生きています

記憶は遥か彼方
思い出すの?



「というわけで、明日は夏休み前の合同練習なわけで」

赤点馬鹿はいないかー?黒尾先輩の言葉におー!と全員が返事をした。リエーフ君もぎりぎりだった、でもよかったよかった。東月君からの雷が落ちる事も無かったわけで。

「んじゃ明日は誰も欠けずに行けるな」

梟谷と生川、森然それと烏野。梟谷以外は当然初めてなわけで「どんな人がいるんだろうなー?」リエーフ君はわくわくしていた。私も楽しみだ、黒尾先輩が生川はサーブに力を入れているって聞いたから、徹みたいなサーブを打つ人はいるんだろうか、それがすごく楽しみで。

「私この後ちょっと抜けますね」
「…あかりちゃんもしかして赤て」
「明日の練習に向けて買出し行ってきます。全教科平均点以上取ってます」
「あー、買出しか。誰か連れて」
「一人で大丈夫です。みなさん練習しててください」

あ、水分補給はしっかりしてくださいね。もう夏本番なんですから。呼びとめられる前に私は体育館を出た。職員室行ってお金預って…買い物メモは…。猫又監督が「車だしてやろうか?」なんて言ってくれたけど首を振った、テスト期間中部活禁止だったからみんながっつり練習したいだろうし、みんなの練習見てあげてください。頭を下げて職員室を出て。



「あつー…」

痛いほど照りつける太陽、本当に夏本番だなぁ…。私は一歩踏み出した。


◇ ◆ ◇


「あ、あかりちゃんだ」
「雀田先輩?」
「ひさしぶりー!」

梟谷のマネさんに会った、隣には赤葦先輩。「あかりちゃんも買出し?そっちの男子は誰も付いてこないの?女の子一人に買出しさせてー」雀田先輩が頬を膨らませた。慌てて首を振る。

「テスト明けでみんなに部活やってほしかったので」
「でもだからって女子一人は無いでしょ!はい赤葦」
「え、ちょ」
「持ってあげて!」

荷物が奪われてそれが赤葦先輩の手に納まる。ええ?中に浮いた手をどこへやったらいいのか分からなくなってしまった。あ、あの…普通に持てます、から返してください。「いいのいいの!荷物持ちは男の仕事!」じゃ、私先に帰ってるわ。雀田先輩は赤葦先輩から荷物を受け取ったかと思うと「じゃあばいばいあかりちゃん、また明日!」なんて歩いて行ってしまった。…なんか、状況が可笑しい。赤葦先輩と二人きりになって「で、今度は何か買うの?」なんて聞かれて…いや雀田先輩と帰っても良いんですよ…。


「あの人どうせどっか寄り道していくだろうし、いいよ」
「いや、あの……他の学校の人に手伝わせるのは」
「気にしなくていいよ」

ほら行こう、なんて行き先も伝えていないのに赤葦先輩は歩きだしてしまった。ちょ待っ、慌てて追いかけた。







「えっと、及川さんは」
「よ、呼び捨てでいいです年下なので」
「じゃあ及川で。及川は、何か探してる?」
「え?」
「インハイ予選の時もだけど、何か探してるよね」

食い入るように、他の学校のプレー見てたし。なんて指摘されてしまった。私そんなにガン見してたのかな…全然気付かなかった。頬を押さえる。

「…な、なんと言いますか…兎に角すごいサーブが見たくて、ですね…」
「サーブ?」
「ジャンプサーブ…を」

徹が、兄もバレーをやってるんですけどサーブが凄くてですね…なんて口が勝手に動いてしまう。普段こんなに喋らないのにずっと話続けて、赤葦先輩も顔色一つ変えず相槌を打ちながら聞いてくれて。

「及川ってお兄さんの事好きなんだね」
「…………」
「え、何その嫌そうな顔」
「え、あ…含みある様な…その」
「含み?」

ほら徹の愛情表現がもうドン引きするレベルで、そんな相手に好きだのなんだのって言われると同レベルで?というか…徹好きだけど好きじゃないです。赤葦先輩は頭に沢山クエスチョンマークを付けているようだった、分かりづらくてすいません。


「黒尾先輩とかも言ってたんですけど、会ってみればわかります」
「そんな機会ないと思うけど」
「ですね、あと会わない方が良いです。色々危ない人なので」
「及川の兄って何なの」

わかんないです。
そう、私は徹がまるでわからない。





◇ ◆ ◇



『え、俺仲直りしてから言ったよね。あかりの事大好き過ぎて、今現在あかり不足で死にそうなんだけど』
「もうわけわかんない」

夜、久しぶりに電話をした。ラインとかは…まぁ程々にするけど電話は本当に久しぶりだ。だって掛けると暫く徹が喋り続けるんだもん。途中から何言ってるのかまったくわからないし。


『俺の意地の悪い最低な拗らせ方は理解したでしょ』
「理解は出来てない」
『あ、うんごめんなさい俺が悪かったです。嫌いなんて思ったことないし、昔から俺はあかりがす』
「ところで徹」
『告白遮った!』
「烏野って知ってる?」

烏野って宮城だよね?そう聞くと電話の向こうの徹は押し黙った。「徹?」しばしの無言、後「…うん、知ってるけどどうしたの?」明日合同練習あるから、土日の二日間。そういうと「ズルイ!俺も合同練習したい!」なんて泣きごとが聞こえた。

「…そんな、泣きそうな声で言わなくても…練習試合なら他に」
『違うよあかりに会いたいんだよ。くっそ夏の合宿は組まれちゃってるし…そっか、合宿が』
「音駒は毎年梟谷学園グループってグループ内で合宿してるから関わりない青城は入れないよ」
『じゃあなんで烏野!?』

よりにもよって飛雄が居る学校!?叫ぶように徹が言った。「とびお?」『うわぁああ!あかり飛雄呼ぶの止めてあかりが汚れる!というか俺以外の男の名前呼んじゃいけません!』うるさい。


「黒尾先輩夜久先輩海先輩研磨先輩」
『苗字は許す…って孤爪君だけ名前!』
「フレンドリーに」
『友情ならいいよ!別に!夜久ちゃんの名前呼びは許しません』
「なんで夜久先輩…?」
『黒尾も駄目、あいつ俺の天敵』
「黒尾先輩と徹凄く仲良いよね」
『え、どこが?』

なんだかんだで仲良いじゃないか。『あいつと仲良し認定は嫌だ…』沈んだ声、分からなくもないけど、黒尾先輩性格が良いし、色んな意味で。そういう所徹に似てるんだよ『似てないよ!』主将ってどこもこんな感じなのかな…あ、でも木兎先輩は違うか。『ちょ、木兎って誰初めて聞く名前』うるさい。

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