素晴らしく憂鬱に生きています

強者の集い
勝つのは


「……」
「あかりちゃん呆けてどうした?」
「…いや、あの…バレー部って沢山あるんだなぁって」

そりゃあ東京の高校の数分くらいはあるだろうけど…なんというか、都会なめてました。見渡す限り人人人、人の波に飲まれそうになる。インターハイ予選の会場、巨人が沢山いました。「みんな巨人だね」「そうだね、あかりと夜久さん以外…痛っ!夜久さん痛い痛い!」無言でリエーフ君が夜久先輩に蹴られていた。夜久先輩身長ネタ、ダメ絶対。学習しないリエーフ君は無視する。黒尾先輩から手渡されたプリントに目を落とした…数が多い。他県がどれくらいか分からないけど、やっぱり多い気がする。

「ここを、勝ち抜くんですね」
「おう、井闥山、梟谷、戸美…ライバルがゴロゴロいる」
「知らない高校ばっかり」
「あかりちゃんインハイちゃんと見ておけよー。俺らは今年最後だけどあかりちゃん達はあと2回は経験するんだから」

黒尾先輩、最後とか言わないでください。そりゃあ3年生は最後だってわかってる。春高も残るとは聞いているけど、インターハイは最後。私は初めてで、先輩達は最後。なんだか気持が下がった、それに気づいた黒尾先輩は「春高あるから負けて良いってわけじゃねぇ、ちゃんと勝つ」そう笑って乱暴に私の頭を撫でた。


「俺らの試合は…あと15分後くらいにコートか」
「私色々用意があるので先に行っててください、すぐ追いつきます」
「あかりちゃん一人で大丈夫か?」
「大丈夫です」
「ナンパされんなよ」

なに馬鹿な事を言ってるんだろうか、「はいはい、わかりました」「はい、は1回!」「はーい」「伸ばさないの!」なんだろうお母さんみたい、全然お母さんに似てないけど。「黒尾お母さん、リエーフ君が迷子です」「…は、リエーフお前何処行った!?」「しらない」あんなに背が高いのに見当たらず、慌てて探す黒尾先輩と呆れる夜久先輩達を横目に小さく「いってきまーす」と声を掛けその場から離れた。







「えーっと、荷物これ、と」
「あれ、及川?」
「…?」

及川、と呼ばれふと振り返る。と同時ぐらいに頭を掴まれた。「ひ」小さく声を上げる。「木兎さんいきなり頭掴むのはやめてあげてください、怯えてますよ」あ、梟谷苦労人の赤葦先輩。目が合ってお辞儀をする。

「ほら木兎さん、手を離して」
「及川って丁度良い位置に頭あるよなー」
「聞けよ」

赤葦先輩尻目に私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる木兎先輩、すいません髪ぼさぼさになるのでやめてください。なんて思ってたら今度はほっぺをモミモミされた。なんだろうかこの状況。ハッ!「これがナンパ…」「ごめん及川、さん?何言ってるの」冗談です。あ、私1年なんで呼び捨てで良いです、そう言うと「わかった、及川。あと木兎さんいい加減にしてください」ゴッと鈍い音が響いた。



「…で、及川ひとり?」
「ちょっと放置してた荷物なんかを取りに」

ドリンク放置しちゃってたので、ボトルの入ったカゴを持ちあげると「持とうか?」なんて赤葦先輩が言ってくれた。首を振る。これくらい重くもなんともない。「それじゃあ私」なんて歩き始めようとした時「あ、音駒のマネちゃんだ」おっと、背中に体温が伝った。



「頭鷲掴みとか、背後から抱きつくとかやめてあげてください」
「うわーちっちゃーい!小動物みたいで可愛いー」
「だから聞けよ」

今度はマネさんに捕まった。「丁度良いサイズー!」丁度良いって何だろうか、背中からむぎゅーっとされ、もう一人のマネさんに「ポッキーたべる?」なんて差し出されてどうしようかとあわあわする。

「雀田さん白福さん、及川困ってますからいい加減」
「及川…何ちゃん?」
「………」

赤葦先輩が頭を押さえた。私なんかのためにすいません赤葦先輩。「えっと…私及川あかりと言います…えっと…あの、私そろそろ戻」「私は雀田かおり、こっちの子が白福雪絵」「よろしくねー」「よ、よろしくお願いします」「なんか及川って苗字を何処かで」「私も私も」あ、あの私マネの仕事…戻…戻らないと…



「ふたりとも?」

低い声が響いた。ぴたり、マネさん2人が固まる。緩んだ腕から抜け出してカゴを持ちなおす。

「あ、赤葦…」
「さっき木兎さんにも言いましたけど、あまり他校の子を構い過ぎないでください。及川困ってるじゃないですか。仲良くしたいのは分かりますけど時と場所を選んでください。ごめんね及川、よーく言い聞かせておくからもう行きな。きっと黒尾さん達心配してる」
「…あ、は、はい…お邪魔しました…」


ダッシュで逃走した。後ろから「赤葦ごめん!」「お説教いやー!」「五月蠅いですよ!大体…」声が響いてすれ違う人達はそちらに顔を向けていた。なんか本当にごめんなさい。とりあえず赤葦先輩は苦労人、怒らせてはいけない人ってインプットしておく。












「木兎が静かだったのは赤葦の説教終わってたからなんだね…」
「木兎さん大分五月蠅かったので」
「まだ頭がぐわんぐわんするぞー…あかあしー」
「知りません」



◇ ◆ ◇




「あかり、遅かったな」

今探しに行こうかと思ってたところで。夜久先輩に「ごめんなさい遅くなって」頭を下げた。もうアップを終えていたようで…本当に申し訳ないです。あ、リエーフ君無事に見つかったんですね。既にお説教あとらしいしょんぼりとしたリエーフ君を見つけた。

「あかり何処まで行ってたんだ?」
「いや、凄い近くだったんですけど…ナンパされて」
「は?」

梟谷のマネさん達に。そういうと「ああ…」なんて夜久先輩は苦笑した。




以前の練習試合で「夜久君、あのちっちゃい子マネージャー?」「そうだぜウチの子可愛いだろ?」「黒尾には聞いてないよ。ちっちゃくて撫でまわしたい」「ねー?」「人見知り激しいから程々にな…?」って言う会話が有ったとか無かったとか。

さてインターハイ編ですが殆ど情報が無いのでさらっと流します。ねつ造しかありませんがご了承ください。

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