素晴らしく憂鬱に生きています

【花巻貴大の話】




「で、マジで置いて帰るんだネ」

及川とウシワカを置いて俺達は学校を後にした。結局ゲスモンスターとアドレス交換をしたらしい妹ちゃんは「えーっと…ブロックブロック…」なんて画面を睨みつける。聞いてたより全然おどおどしてないし、というか逞しくない?「おまえ、成長したな…」という岩泉の声が副音声で別の方向に、と聞こえた気がした。

「黒尾先輩のお陰です」
「…音駒の主将か?」
「はい、黒尾先輩も絶賛ブロック中です」


憐れ音駒主将、一体何をしたんだ。ちょっと距離を見誤ると俺もブロックされるかもしれない。先程入ったアドレスを思い浮かべながらそんな事を思った。


「ていうかさっきから金田一そわそわし過ぎ」
「えっ!?」

タッパあるくせにさっきから国見の後ろに隠れて妹ちゃんを見る金田一に笑ってしまった。さっき国見が「命が惜しかったらあんまりあかりに近づかない方が良いよ。及川さんの前であかりの名前出すのもだめ。殺される」とか助言してた。ほんと、国見の中の及川ってどうなってんの…?さっきから岩泉も頷いてるし。なんだこいつら。


「っ、俺金田一勇太郎、です!」

同い年でしょ金田一、なに敬語で喋ってんの。

「及川あかりです。同級生…ですよね?国見君と居るところ見たことある」
「…!お、おう」
「あと影山君も」

ぴしり、金田一と、あと国見の動きが止まった。あー…この子ら全員北一出身か。色々問題が合った学年で。そこと関わりあるのか妹ちゃん。割と顔広いじゃん。


「なんで、あかりが…あ、1年の時同じクラスだったか」
「そう。『及川さんの妹なんだろ!?お前もバレー上手いのか!?』って話しかけられて」
「影山らしい…」
「『及川さんに俺にサーブを教えて下さいって頼んでくれ!』って言われたり」
「あいつ目ざといな」
「今の及川さんだったら、多分悔しみながら影山にサーブ教えたんだろうな…」
「『及川さんと仲悪いのか?妹なのに?』って傷抉られた」
「あいつバレー馬鹿だから」
「王様だから仕方ない」

なにこの子たち超面白い。「なんか、1年組面白いな」松川も同じことを思ったらしい。うんうん、と頷く後輩たちが何故か可愛く見えた。







「今更ですけど、徹置いてきてよかったんでしょうか」
「すっごい今更だね」

既に学校は遥か彼方、後輩組とは途中で別れ俺達は及川家の前まで来ていた。「みんなでご飯食べに行こうよ」と言うと首を横に振られてしまった。でも、そうだよね。久しぶりに家に帰って来たんだから家族との団欒を過ごしたいよね。チッ、及川が妹ちゃん独り占めじゃん。

「今度また帰ってきたらみんなで遊ぼうね」
「及川抜きで」
「クズ川抜きで」
「徹…いや、良いんですけど。みなさんの都合が合えば。また夏あたりでも…部活が無い日に戻ってきます」

あ、忘れてた。妹ちゃん音駒バレー部のマネージャーか。いいなぁ…青城マネいないし。


「えっと、送ってくださってありがとうございました」
「妹ちゃん、元気でねー」
「ラインのグループ作っておこうか、及川抜きの」
「イイネ」
「…徹に厳しい…」
「自業自得ながら気にすんなあかり」

じゃーね!と妹ちゃんが家に入るのを見送ってから、俺達は歩きだした。



「あのさぁ」
「どーした花巻」
「可愛いよね、妹」
「かわいいよな、妹」
「なんでお前らシスコン化してんだ」
「岩泉も人の事いえねーよ?」
「……」

及川に全く似ず、良い子だったね。なんて帰り道笑いながら歩いた。

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