素晴らしく憂鬱に生きています

【岩泉一の話】



なにやら面倒なことになっている。流れでパスされたあかりに肩を手を置き、呆れながら及川と、それと牛島を見る。今にも牛島に噛みつきそうな及川を止めるものは誰もいない。いや、俺が止めるべきなのか。如何せん巻き込まれたくない気持ちがある。

「あ、岩泉さんお久しぶりです」
「…おぉ、久しぶりだなあかり」

今普通に喋るかあかり。及川と牛島そっちのけで俺に話しかけるあかりに緊張がほぐれた。「あの、電話ありがとうございました。お陰で仲直りできました」なんて言うあかりの頭を撫でる。俺の行動は目に入っていない様で、及川はひたすら牛島を睨みつける。おい、及川置いて帰ろうぜ。


「あかりは何か変わったな」
「…そう、ですか?」
「おう、昔より普通に喋ってる」
「それは単なるコミュ障で…いや、友達できたので」
「よかったな」
「はい」

前まで見ることが出来なかったあかりの笑み。10割方クズ川のせいである。さて、帰るか。なんて言うと首に腕が回った。ぐえっと声が出る。


「岩泉一人で抜け駆けとかずりーぞ」
「抜け駆けって何だ松川」

大体妹みたいなあかりに――なんて思っているといつの間にかあかりが居なくなっていた。あ?と目を向けると花巻に捕まるあかりの姿。


「こんにちは、花巻でーす。電話で話したの覚えてる?」
「覚えてますよ。だから今日来たんです」
「わー、及川がツンツンしちゃう妹ちゃんってどんな子かと思えば、フッツーに可愛いじゃん。メアド交換しよ?あとラインも」

おい誰か花巻を止めろ。「花巻ぐいぐい行くねー」なんて呑気に言う松川。松川もあかりの方へと向かう。おい馬鹿止めろ、洒落にならない。


「なんだよー、岩泉もなんだかんだでシスコン?」
「お前な」

松川の首根っこを掴む。一方あかりの方には…国見?何故か国見が花巻の制服を引っ張っていた。



「どうした、国見?あ、国見も妹ちゃんと――」
「花巻さん、その辺にしとかないと及川さんに殺されますよ」

すげぇ深刻そうな顔をして国見が言った。なんだ国見、わかってんじゃねーか。今のアイツは、及川は妹の為なら何をしでかすか分かったもんじゃない。キョトンとする花巻、それともうすでに何かを察しているらしい、遠い目をするあかり。花巻お前この前の音駒との練習試合覚えてねーのか。全員死に掛けたじゃねーか。国見は完全に死んでたけどな。

「あんまり調子乗ってあかりにべたべたしてると、こう、及川さんにナイフで後ろからグサリいかれますよ」
「国見、お前の中の及川ってどうなってるの?」



「いや、大体合ってる」
「岩泉もなに言ってんの?」

いやお前ら及川甘く見過ぎだから。そう考えているとやっぱりあのクズ川を止めなければいけないと思い始めた。


「その流れだと若利君殺されるんだけど!?」
「び、っくりした…おいテメェなんでこっちに」
「だって若利君と及川君の間の空気暗黒過ぎて怖いんだよ。なにあれ殺し合いでも始める気?」

仁王立ちの牛島と、目だけで人が殺せそうな及川。「もうほっといて白鳥沢帰れ」なんて言うと「なんか関わったら死にそうだからそうする」とゲスモンスターこと天童が身を翻した。


「あ、ゲスさん」
「だからゲスさんは止めて!?」
「すいませんゲスさん、もし知ってたら若さんの連絡先教えてください。もうああなったら話しかけられないので」
「んー、いいよー。ついでに俺の」
「若さんだけで結構です」

ヒドイ…なんてスマホを取り出す天童。これは止めるべきなのか。しかしあかりと牛島わりと仲が良さそうだし…牛島相手といえどもあかりにとっては大切であろう友人で…


「岩泉、顔ヤバイ」
「うるせぇ」



          
岩ちゃんも結構過保護なのです

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