春色の日常
「で、僕らに言う事は?」
「た、大変ご心配をおかけしたようで…無事国見君とは」
「お付き合いしました?」
「……ん?」
「え?」
「…え?」

私と月島君の動きが止まった。山口君は困った様に笑っていた。

「…仲直りしただけだとか、」
「……そ、そうだよ…?」
「馬鹿じゃないの」
「なんで!?」
「ツッキー、きっと天城ちゃんには何を言っても無駄だと思うんだ」
「なんか山口君酷い事言ってない…?」


月島君は溜息を吐いた。なんでそんな溜息吐かれなければいけないんだろうか。そもそも付き合うとは。そんな話どこから…というか…。


「なんで私が国見君好きな事、知ってるの?」
「馬っ鹿じゃないの?というか馬っ鹿じゃないの」
「2度言った!?」
「あんだけ嬉しそうに国見の話しておいて、ただの幼馴染やら友達やらなんて言ったら僕は天城ぶん殴る」
「ぼ、暴力的…!」
「これはあれだ、国見が可哀想だ。もうちょっと弄って遊ぼうかと思ってたんだけど、流石に可哀想だ」

あーあ、月島君は面白くなさそうな顔をした。なにが一体どういう事なの…。「まぁさ、そこら辺の事も国見君に頑張ってもらうってことで、ね?応援してあげようよ」なんていう山口君に私は首を傾げるばかりだった。





◇ ◆ ◇



「国見ちゃん、その後どう?」
「お陰さまで、普通にさくらと喋れるようになりましたよ」
「へぇ…よかったね!で?」
「で?って言われても」
「付き合った?」
「及川さん」

俺は及川さんの肩を掴む。及川さんはさくらをただの可愛い後輩と思ってるようですけど、アイツそんな生易しいもんじゃないですからね。天然記念物ですから、あいつ。

「そもそもアイツに付き合うなんて言う概念は無いですよ」
「どういうことなの」
「子供の時からべったりだったもんですから、そういう考えが無いんですよ」
「だって好きなんでしょ?」
「好きですけど」

く、国見ちゃんがそんな真っ直ぐ自分の感情を言うだなんて…!なんて感動してる及川さんを殴りたい。「って違うよ、感動してる場合じゃないんだよ!」と今度は逆に及川さんが俺の肩を掴んだ。そしてゆらゆらと揺らす。

「ちゅーとかしたいでしょ!?好きならさ!」
「しますけど」
「……ん?」
「しますけど」

いとも簡単に、及川さんが肩から手を離した。そのまま覚束ない足取りで、丁度近くに来た岩泉さんの身体にしがみ付いた。「おい、なんだてめぇ」と岩泉さんが及川さんを押しのける。

「岩ちゃん、あそこ可笑しい」
「可笑しいのはお前の頭だ」
「違うよ!?国見ちゃんとさくらちゃんの関係おかしいよ!?付き合ってもないのにちゅーしちゃうんだよ!」
「…それ、今更じゃね?」
「えっ」
「中学ん時からあそこいつも手繋いでたじゃねーか。それこそずっと」
「………ほんとだ!?」

思い出したかのように及川さんが声を上げた。岩泉さん、巻き込んですいません。「だから国見の隣に天城が居ないとすげー違和感あるんだよなぁ…」と岩泉さんは俺をじっと見る。


「そんだけ一緒に居て付き合ってないの?というかもうそれお付き合いでしょ!?」
「付き合ってはないです」
「価値観の違いってやつだろ」
「あ、それです」
「この人達ほんと可笑しい…!」

壁に頭を打ちつける及川さんを若干引いた目で見る。まぁ、世間一般で付き合ってるって状態なんでしょうけど、アイツその気は全くないですからね。「まぁ、そういうのもあるってことでいいんじゃねーか?」と首を傾げる岩泉さんに、納得行かない顔をしながらも「…ま、本人達がそれで良いなら…うん」なんて及川さんが肩を落として言った。




        
価値観と認識のズレが他人と違う図

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