淡い想いは加速する
「飛雄」

ちょいちょい飛雄を手招きする。ぱたぱたと近付いてきた飛雄の腕を引っ張って膝の上に乗せた。「とびおちゃーん」ぎゅーっと抱きしめて真っ赤になる飛雄にキスをした。


「及川さん、なんか機嫌良いですか?」

うん、わかる?及川さん最近無敵だからさ、バレーも調子良いし大会のメンバーにも正セッターとして選出されたし。それよりさぁ
ぴらっと一枚の紙を飛雄に見せる。お前もう卒業になるし、どうせ俺と同じ実業団に入るんだろ?なら問題ないでしょ。「なんですかこれ?」紙を受け取った飛雄に「俺達の新居」と言った。

「…え」
「いい加減この部屋じゃ狭いと思ってさぁ、色々物件探してたんだよね。狭いとこうやってくっついていられるから良かったんだけど」

でもほら、お隣に声が聞こえないようになんて気を使わなくていいでしょ?一瞬何の事だか分からなかったらしい飛雄は首を傾げて数秒後、顔を真っ赤にして「及川さん!」と怒鳴り声を上げた。あははは、冗談冗談。ぶっちゃけ冗談じゃないけど。



「お引っ越ししようか」
「…、」
「え、嫌?」
「嫌じゃないです、けど」

ここでの思い出、沢山あるから。
飛雄は小さな部屋を見渡した。東京来て住む場所ないからって押しかけて抱きしめてキスして触れ合って。そうだね、沢山の思い出が詰まってる。でも無くなるわけじゃないんだから、いつだって俺達はここでの事を憶えている。

「新しいところでも、思い出いっぱい作ろう?今まで以上に思い出作ってさ」


広いからさ、みんなでわいわい出来るよ。
及川さんいれば、べつにいいです。
ほんっと可愛いねお前は。

キスをして抱きしめた。「俺はどっちでもいいけど」「…及川さんが折角見つけたところですし」「別に気にしなくても良いけど」「…行きます」飛雄と目が合う。ふにゃり、飛雄は笑って「ただし条件が」なぁに条件って。


「ベッドは、ひとつです」
「お前…ほんっとに…もう」

どこにいても、飛雄となら幸せだ。

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