IF
「君は飛雄の事好き?」
    すきだよ」

それを聞いて及川君が笑った。なんで笑うんだよ、今振ったようなもんだろう?僕の不思議そうにしていた表情を見て及川君が笑う。

「君はさ、飛雄をこれっぽっちも見てないよね。君は飛雄を通して誰を見てる?」
「……」
「俺の知らない人なんだろうけど」
「僕にとっても知らない人だよ、それに終わった話だ」


この世界に玖渚はいない、僕の知っているぼくの好きだった人達は誰一人として存在していない。だから全部、無意味な話。無意味だけど大切な


「ねぇ及川君」
「なぁに?」
「一度でいいんだ、僕をさ『いーちゃん』って呼んでくれない?」
「、いーちゃん?」
「…うん」
「いーちゃん」
「うん」
「大好きだよいーちゃん」
「…ありがとう」

どうしようもなく泣きたくなった、僕はぼくじゃない。今ここに居るのはあの時のぼくじゃない。それがどうしようもなく   安心だ。

「及川君ありがとう、もう大丈夫だ」
「もういいの?よくわからないけど何度でも呼んであげるよ」
「いい、もう大丈夫だ」

顔を上げたら及川君の顔が目の前にあって「あ」なんて声が零れた。及川君はくすくす笑って「大丈夫、もうしないよ」僕から離れた。

「君が俺を選ぶまで俺は手を出さないよ。あ、でも魔がさして触っちゃうかも」
「手を出す気満々な気がするのは気のせいかな」
「気のせい気のせい」



◇ ◆ ◇



「漸く一歩踏み出せた気がするよ」
「えらくすっきりした表情だなって思ったらへぇ…面白そうな事があったじゃねーか」

同性愛者第一歩おめでとう、なんて零崎が言うものだから思いっ切り殴ってやった、僕の手が痛くなっただけだった。

「言っておくが別に僕は及川君の気持ちを受け入れたわけじゃないんだからな。僕の好みは相変わらず年上の女性だ」
「かっこいい女が好きか?」
「それは…どうだろう」

みいこさんかっこよかったし、間違っちゃいない気がするけど…。「かっこいい系女子が好きないーたんに朗報だ」いーたん言うな。


「あと2年、いや1年くらいか?お前の世界は崩壊する」
「は?」
「あれだ、なんかこう…隕石が降ってきて世界滅亡とかそんな感じ。傑作だろ」
「冗談抜きで笑えないぞ零崎」
「間違っちゃいねーぜ?全部俺の勘だけど」
「勘かよ」
「楽しみにしておけ、世界滅亡まで」
「楽しめないよ」

なんだ僕はまた死ぬのか。肩を落とす僕に「いいや、死なないぞ」零崎が笑った。世界が滅亡するんじゃないのかよ。「するさ、お前の世界が」僕の世界?

「完膚なきまでに壊されるから楽しみにしとけ」



そして2年後、確かに僕の世界は崩壊した。
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