「誕生日おめでとう」

眠い目を擦りながら、こらえきれない欠伸をそれでもかみ殺しながら、私は貴方に告げる。
月のない、小さなランプの僅かな明かり以外は光源のないこの薄暗い部屋の中、それでも私の目にはその姿が確かにはっきりと映る貴方に。


「――眠いなら、寝てればいーのにな」


苦笑しながらも、くしゃくしゃと私の頭を撫でてくる貴方。
その子どもをあやすかのような手つきに、私はむっとしながらも、その手の暖かさに再び夢の世界へと誘われかける。
まだ駄目、寝てしまうわけにはいかない。


「でも……一年に一回しか無いのよ。リボーン、貴方の誕生日は」


0時5分前にアラームをかけて、無理矢理自分を起こした私。
そして0時ジャストに貴方にお祝いの言葉を贈ったのだ。

本当ならワインを注いで、乾杯したいところだけれど、それは今夜のお楽しみにとって置こう。
今そんなことをしたら、私は間違いなく一杯で夢へと旅立ってしまう。
それではとてもじゃないけどもったいないではないか。
それに美味しいディナーと一緒に彼と呑むワインはきっと格別に違いない。

それよりも先に私にはしなければならないことがある。
朝になれば、山の様に積んであるだろうそれが貴方の目に入る前に私は渡さなければいけない。
今も左手の中に閉じこめてある‘これ’を。
後はタイミングを見計らうだけだというのに。


「まぁそうだけどな。だけどお前がそれで体調を崩したら意味がないんだぞ」
「どうして?」


貴方の誕生日に私が風邪か何かを引いて寝込んでいたって、別に貴方に問題は起きないはず。
自分の誕生日に寝込んでいる人がいたら鬱陶しいかもしれないけれど。


「知りたいか?」

うん、という言葉を紡ごうとした唇。



しかし、それは音になる前に貴方によってふさがれてしまった。
執拗に追いかけてくる貴方に、私の息はどんどん上がっていく。
まともな思考を出来なくなってしまう。



「リ、ボーン……」


くらくらと酸欠。
ようやく紡ぎだせたのは貴方の名前だけ。
そして今まで必死に押さえていた睡魔が、ここぞとばかりに私に襲いかかってきた。
もう私にあがなう力は無い。
まだこの手の中にあるというのに。
貴方に渡さなければいけないのに……。



ぼうとする頭で貴方を見つめれば、貴方はにやりと笑ってから告げた。
お得意の読心術で私の考えに気付いたのだろうか。
それとも先程の答えなのだろうか。



“お前が何よりのプレゼントだからな”



軽いキスと共に送られた言葉。



そしてそれを最後に、左手の中に収まっている小さな箱を貴方に渡すはずだったのに、残念ながら私の視界は暗転していった。
次に目覚めるときは小鳥のさえずり響く朝日の中なのだろう。

暖かく優しいのに何故かずるい。





愛し子には良い夢を
(箱の中身?)(秘密)





Happy Birthday! Reborn!

(081015)
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