まつりのあとに

集めたお菓子や食料を一纏めにして、長屋の端の空き部屋に置いておく。食べるのは明日になってからだけれど、朝になってこの殆どが消えていても、不思議に思ったり不満を抱く者はいないだろう。
伏木蔵と平太、孫次郎に怪士丸は、夜着へ着替えるとひとつの部屋に集まった。今日はこのままお泊まり会だ。二人で寝るのは、少しだけ、こわいから。





夜更けに目を覚ました伏木蔵は、どうしようかなぁ、と考える。厠に行きたい、でも、今日は忍術学園には珍しいほど静かな夜だから、ひとりでは少し不安。誰かを起こそうかと思ったけれど、平太はもっとこわがりだし、孫次郎はその平太に裾を握られてる。怪士丸だと他の一年生を驚かせちゃうかもしれない、いや、これは一年ろ組全員に言えることだけど。とにかくぐっすり眠っている彼らを起こすのは忍びなくて、仕方ないと伏木蔵はひとり部屋を抜け出した。
真っ暗な道を辿り、厠で用を足す。穴にも気を付けなくちゃねとゆっくり歩いていれば、長屋の一室から抜け出てくる彼を見た。南瓜の被り物の、彼を。
彼も伏木蔵に気付いたらしい。被り物に開けられた穴が、仕方ないなぁと言いたげに見える。彼が出てきた部屋はやはりお菓子たちを置いている部屋で、何をしていたのかなぁと伏木蔵に生まれたちょっとばかりの好奇心。

「……ねえ、君は誰なの?」

その好奇心に任せてそう口にした伏木蔵に、南瓜の被り物の彼はクスクスと笑い声を零す。そしてそっと人指し指を被り物の口許へ。秘密だよ、そう言うようにして、彼は廊下のずっと向こうへと足を運ぶ。
行ってしまうのか、もう会えないのか、また来年会えるのかは分からないけれど、さすがに追いかけることはできない。伏木蔵は黙ってそれを見送る。

「今日はありがとう」

最後に振り返った彼のそれは、知った誰かの声だった。
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