よねんせいと

田村三木ヱ門の部屋を訪れた孫次郎は、その光景に「すごぉい」感嘆なのか呆れなのか分からない溜め息を吐いた。
入り口の付近にごっちゃりと積み重ねられた菓子や野菜。高級そうなものもあればよく分からないものもある。これを全部用意したのだろうかと三木ヱ門を見てみれば、三木ヱ門はそれに肩を竦めてみせた。

「その辺は滝夜叉丸や喜八郎が置いてったんだ。全部持っていってくれ」
「いいんですか?」
「その為のものだからな」

その言葉に一年生たちが手分けして籠や袋に詰めていく。野菜もこれだけあるなら幾らか生物委員会に分けてくれないかなぁと思う孫次郎は、そんな中で三木ヱ門と話す南瓜の被り物に気がついた。そういえばさっきも、と二年生三年生を訪れたときを思い出す。彼は先輩たちと話をしていた、ような。

「悪いなぁ。甘いものが苦手なの、覚えててくれたんだな」
「……当然だろ。お前たちが喜ぶなら、それでいい」
「ちゃんと皆で分けるよ。ありがとなぁ」

その楽しそうな声は、先に聞いたのよりも幾分低い気がする。面の穴から南瓜の中は見えなかったけれど、見えた四年生の表情は寂しさとか悲しさとか懐かしさなんかが混ざっていて、孫次郎はひとつだけ理解した。
この野菜は委員会のためになんて貰っちゃいけないものなんだ。
×