さんねんせいと

「失礼しまぁす……」
「おう、来たか」

戸を開けた三年生の声に、平太はそっと安堵の息を吐いた。富松作兵衛先輩、委員会で関わりのある先輩は、見慣れない二年生より随分と安心させてくれる。

「お菓子なら沢山あるぞ!」
「木の実と果実も採ってきた」

その作兵衛と同室のふたりには少し慌てたけれど、それでも優しく接してくれる先輩だ。ばらばらと掌に落とされる飴や木の実に、それを落とさないように「ありがとう、ございます……」頭を下げる。兜が重くて、あまり深くはできなかったけれど。

「ありがとう」

伏木蔵と協力して食物を袋に詰める平太の耳に入ったその声は、誰のものだろう。面の小さな穴からそっとそれを覗き見る。あの大きな南瓜の被り物は、一体誰なのだろう。声に聞き覚えのない気がするのは、ただ被り物でくぐもったからなのだろうか。

「……来年も待ってるからな」
「ちゃんと来るんだぞ!」
「迷うなよ」
「お前らが言うな!」

三人と話す姿はなんだか親しげだけれど、そんな生徒はいただろうか。平太には分からず、もしかしてと一瞬浮かんだ想像は平太にとっては恐ろしいもので、ぶんぶんと首を振ってそれを頭から追い出した。

「……何してるのー?」
「……なんでもない」

やっぱり兜が重くて、ふらついてしまったけれど。
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