にねんせいと

初島孫次郎は狐の面とふさふさとした尾をつけられて、二ノ坪怪士丸は天狗の面と黒い羽根を背負っている。その他の生徒も集まれば、十数人の生徒たちは二年生の長屋から順に向かった。

二年ろ組の生徒の部屋を幾つかの班に別れて訪れると、怪士丸はふぅと息を吐いた。それにつられるように孫次郎も少しだけ肩の力を抜く。そうすることで、いつの間にか緊張していたのだとようやく気が付いた。

「二年生と関わる機会ってあまりないから、緊張したね……」
「そうだね……」

他の生徒も同意するように頷いた。彼らは誰が誰だろう。クラスメイトの筈だけど、皆が面や髪やで顔を隠しているから分からない。それでも友達には違いないし、後で答えあわせをするのも楽しそうだと名前を聞くのはやめておいた。

「それにしても……二年生、なんだか驚いてたね……」
「うん……すごく、びっくりしてた」

同意する怪士丸はつい先程のことを思い出す。部屋を訪れて、一言二言話していたら、突然二年生が目を丸くして声を上げた。それは誰かの名前だったけど、誰の名前だったのだろう。聞き覚えはなかったし、一年ろ組にはそんな名前の生徒はいない。不思議だなぁと思ったけれど、「早く三年生のところへ行かなきゃ」誰かの声に思考を振り払って歩き出した。
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