じゅんびちゅう

忍術学園では毎年一年ろ組を中心に小さな祭りが行われる。
祭りの内容は単純で、一年ろ組の生徒たちが妖怪や幽霊のように仮装をし、他の学年のろ組長屋を訪れ何かしらの菓子や食物を受け取る。全て訪れたらそれを持ち帰り、その翌日に皆でそれを食して終わりだ。
恐がりな生徒ばかりだが、お菓子をもらえるならと一年生たちは喜んだ。それを眺める教師や上級生たちの表情は、微笑ましいものばかりでは、なかったけれど。



「出来たよ、伏木蔵」
「ありがとうございます〜」

鶴町伏木蔵は全身を包帯で包み込んだ。右目だけを覗かせるその姿に彼が懐いているプロ忍を思い出す。
大切な包帯だからあまり汚さないようにと善法寺伊作は注意するが、きっと無意味に終わるだろう。それでもいいのだ、今日は大切な祭りなんだから。

「留三郎、そっちはどうだい?」
「今出来たとこだ。平太、重くないか?」
「は、はい……」

下坂部平太は鎧兜に鬼の面。こわがりな彼の元にこわいものが寄りつかないように。それを見た伏木蔵がスリルと笑った。

「ほら、これは俺たちからだ。ちゃんと皆で食べろよ」
「よろしく、頼んだよ」
「はぁい」
「分かりましたぁ……」

ずしりとした重みの包みを受け取り、小さな妖たちは自分の長屋へと駆けていく。月は頼りない光しか与えなかったから、振り返っても見送るふたりの表情には気付かなかった。
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