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「というわけなんだが、どうすればいいと思う?」

早速委員会活動を一時中断し、体育委員会の面々に相談する小平太に、平滝夜叉丸は溜め息をぐっと堪える。頭の中で作法委員長に恨み節を唱えつつ、みょうじなまえの身を案じながら、相談事にどう答えるか脳内会議し、つまるところ頭はしっちゃかめっちゃかに混乱していた。
とにかくなまえになるべく迷惑を掛けないよう、しかしうまい具合に仲を進展させるきっかけになってほしい。早々に恨むのはやめることにして、滝夜叉丸は必死に頭を働かせた。思いは他の体育委員も似たものらしく、一様に眉間に皺を寄せていた。

「えっと、今まではどんなところに行ってたんですか?」
「んー、マラソンついでに裏裏裏山の山頂とか、兵庫水軍さんのいる辺りの海とかに行ったな。普通にマラソンだけで終わることも多かったけど」

そのマラソンをやめるだけで多分喜ぶかと。
浮かんだ考えは言えなかったのだろう、質問した皆本金吾は「……そうですか」目を泳がすだけだった。多分絶対、通じない。

「じゃあ、贈ったものは?」
「薬だ。切り傷用、火傷用、毒虫の解毒剤、頭痛薬や風邪薬なんかも贈ったな」

薬ばっかりかよ。
やっぱり言えなかったのだろう、次屋三之助も「……そうっすか」口を閉ざした。他のものも贈ればいいのに、何とかの一つ覚えのようだ。あと多分保健委員会に良いように使われてる。

「じゃあー、花なんかいいと思います」
「花?だが、この時期に花なんかそうそう咲いていないぞ」

時友四郎兵衛の発言に、訝しむのは小平太だけではなかった。滝夜叉丸や三之助もまた首を傾げている。
立春が過ぎたとはいえ、寒さはまだまだ続くこの時期。寒さに強い花は学園の周辺で見たことがないし、梅ですらやっと蕾がつき始めたところだというのに、何の花を贈れというのか。
しかし金吾だけは反応が違った。「あれですね!」ずいと身を乗り出す彼には何のことか分かっているらしい。

「この間、教えてもらったんです」
「折角ですから、皆でやりましょう」

年少ふたりの言葉と笑顔に、残る三人は顔を見合わせる。随分と自信があるらしい彼らに乗ってもいいものか。話はちっとも読めやしないのだが。
しかし金吾の言葉の裏に『今日の委員会活動は終了しよう』という思いを見つけた滝夜叉丸は、とりあえず精一杯同意を示すこととした。彼らならなまえの迷惑になることはしないだろうし、この後に予定されているバレーは滝夜叉丸も遠慮したかった。






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