僕らの亀裂

限界だった。
大して仲が良いわけじゃない富松くんに、方向音痴だからと口煩く言われて、行動を制限されて。それが事実ならまだ申し訳ないなぁとか思えたのかもしれない。けれど私は、正真正銘、方向音痴じゃないのだ。初日に迷ったのは初めて来た場所だったからで、その日のことには感謝していたけれど、でもそれ以降学校の中で迷ったことなんかなくて。
それをいくら言っても取り合ってもらえず、自覚しろって言われて、それだけならもう暫くは我慢できたかもしれないけど。
でも、他のクラスの子にも笑われて。馬鹿にされて。
だからもう、限界だった。



「なんなの、もう。私がたとえ方向音痴だろうと迷子になろうと、富松くんには関係ないじゃない。保護者?責任?馬鹿じゃないの。私は神崎くんたちじゃないんだから、放っといてよ。私の為?尚更放っといて。私、富松くんのこと嫌いなの。迷惑なの」



傷つけることを、言ってしまった。




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