09

「……こんなもんか」

忍たまとくのたま、どちらの領域でもない競合区域。ちづるはぐるりと周囲を見回しながら呟いた。
一見何も不自然のないそこは、二重に三重にと罠が張り巡らされている。下級生が引っ掛からないよう細心の注意を払い、優秀な者であるほど掛かりやすく計算され。瞬時に見抜ける者は忍たまでも罠に精通した作法委員長くらいだろう。
もしかしたら五年生が掛かるかもしれないが、そこはまぁ、競合区域だし。死にはしないし大怪我もないだろうし。うん、頑張れ。若干投げやりになることにした。

「あとはくのたまの子たちに教えて……」

可愛い後輩に万が一にも怪我をさせるわけにはいかない。彼女たちが忍たまの誰かに教えてしまうのでは、などと情報漏洩の心配はしなかった。くのたまの結束力は高いから、たとえ恋仲相手にも罠の存在は明かさないだろう。

「誰か掛かるかな。誰が掛かるかな」

きっと最初の被害者は不運委員長だ。助けにきた同室の彼も掛かるかもしれない。よく塹壕や蛸壺に落ちている小松田には立ち寄らない区域であることを確認しておいたから、きっと大丈夫だろう。
いや、掛かる掛からないはこの際どうだっていいのだ。
利口な図書室の番人なら、罠の仕掛人が誰か分かるだろう。急に増えた理由も思い当たる筈だ。さて彼は、彼らはこれからどう出るかな。ちづるはくつりと喉の奥で笑う。
こんな罠はまだまだ序の口。彼らが止めないと言うのなら、本気を出させてもらうだけだ。




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