中在家夢で双忍友情夢な話

現パロで長次のことが好きな幼馴染のために双忍が頑張る話。
長次夢なのに長次がきっと空気。
↓書き出し。鉢屋のみ登場。


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私には幼馴染みがふたりいる。ひとりは男で名を不破雷蔵、ひとりは女で名を舞阪優という。私たちは同い年で親同士も仲が良く、頻繁に遊んでいたため三つ子のように育ったらしい。
成長するに従い、姉と弟たちだったり双子と妹だったりと私たちの関係を表す言葉は変わっていったが、肉親のようなものだとは私たちを含め誰もが思い抱くものだった。

「好きな人が、できたの」

だから優の告白を聞いたとき、私は大いに驚き、その相手が誰なのか見定めてやろうと父親のように思った。
そしてこの大事な話に何故雷蔵がいないのかと疑問に思う。雷蔵に聞かれたくないということは、その相手は雷蔵なのではないか?一瞬浮かんだ考えに、しかし私は首を振る。雷蔵は誰よりもいい奴だが、そんな想いを抱くのは今更過ぎる気がした。

「実はね、雷蔵を呼ばなかったのは、好きな人が雷蔵と親しい人だからなの。あの人のことをよく知っている人に話すのは、なんていうか、まだ恥ずかしくて」

なるほど、優の性格を考えたら分からないでもない。あいつはいい奴だと聞かされるのは恥ずかしい、だとか、もしもその相手に自分のことを勧められたら、だとか、そういったことを思っているのだろう。
私は頷いて、このことを雷蔵に話さないと約束した。
しかし私が然程親しくなく、雷蔵とは親しい者など居るだろうか。学内では基本的にハチや勘右衛門たちと一緒にいるし、学外には雷蔵も優も知り合いは少ない筈だ。部活動もばらばらだから、その関係者も違うだろう。
ふむ、だとすれば。

「図書委員会、か」

私の答えに、優は目を大きく見開き、また細めて微笑んだ。「三郎には敵わないなぁ」これくらいで何を言うか。私はにやりと笑ってやった。
ついでに言うなら年下の趣味はないから一年生は除外。二年生なら私も何度か雷蔵と間違えられたりで親交を深めることになっていたから恐らく違う。と、すれば。

「その通り。私の好きな人はね、図書委員会委員長、3年2組の中在家長次先輩です」

世の父親たちは自分より威厳のある人間を紹介されたらどんな反応をするのだろうか。私は即座に父親のような思考を払い退けた。
なるほど寡黙すぎるきらいはあるが真面目で誠実そうだ。雷蔵が悪く言っているのも聞いたことがないし(そもそも雷蔵はよっぽどのことがないと他人の悪口は言わないが)、自分の周りやその先輩の周りの中では誰より安心して優を託せる悪くない相手だろう。

「よし、私に出来ることなら何でも協力しよう」
「本当?ありがとう、三郎!」

行動範囲や図書室の受付当番、個人情報を調べるのだって私の手にかかれば容易いこと。偶然を装って鉢合わせさせたり、いやそもそも彼女の話を聞くだけだって、何でもしてやろう。
だからその笑顔を曇らせないでおくれよ。お前が笑っていないと、私も雷蔵も調子が出ないのだから。


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