天女様の予言

「予言してあげるわぁ。三日のうちにどっかの賊が攻めてくるわよぉ」

天女様が団子を食べながら何でもないようにそう言ったから、私は慌てて学園長のもとへ駆けていくこととなった。
丁度羊羮を食べていた学園長の庵へ飛び込みかくかくしかじか説明し、天女様を連れてくるように命じられ、天女様の庵へ飛び込みまだ団子を食べていた天女様を抱えるようにして連れていく。逃避行みたいねぇと天女様は私の首に腕を回してころころ笑っていたけれど、学園長の庵に着くとすぐに離して畳の上にゆったりと座った。

「呼び立ててすまんのぉ」
「いいえぇ。何の用かしらぁ」
「その前に……篠崎」
「はい。失礼します」

学園長の視線を受け取り、私は席を外す。天女様は「いてもいいのに」と仰ったが、それを決めるのは学園長だ。話を聞きたければ盗み聞きをしろと、その程度の実力がなければ同席は許されないのだ。

庵の外で待つこと暫く、障子が開き天女様が私の名前を呼ぶ。話は終わったらしい、ちらりと見えた庵の中の学園長は、何でもない風に笑っていた。必要があれば夜にでも上級生を集めて指示を送るのだろう。私は一礼して、天女様と庵を後にした。
帰り道に天女様はうふふと楽しそうにしながら私の腕に両腕を絡めて耳に口を寄せる。そうやって私で戯れるのは気にならないけれど、ふぅ、と吐息が少しくすぐったい。

「さっきの話、知りたい?」
「いえ、私は学園長先生の指示に従いますので」
「そーお?まぁ、咲子はいつも通りずぅっと私の傍にいればいいのよぉ」
「心配なさらずとも、天女様のお側には常に誰かがついていますよ」
「分かってないわねぇ。咲子じゃなきゃ、だめなの」

授業があればそちらを優先しているし、常に私が天女様の傍にいるわけではない。それでも噂や天女様の話では忍たまが何度も訪れているようだし、何があっても天女様の安全は守られると思う。
けれど私を指名する天女様は、一体何を考えているんだろう。曖昧な返事を口にしながら、私は内心首を傾げることとした。





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