殲滅

???/??:??:??

始まりは、何だったっけ。

刀を握り、奴等へと向ける。背にある銃は必要ないだろう。弾丸には限りがあるから、予備が多量に見つかるまではなるべく温存していきたい。そんなことを考えながら、俺は刀を振るった。

全ての異形のモノに終わりを迎えさせることが、俺の使命だ。かつてヒトだったヒトでないもの、化け物や霊のようなもの、そんな奴等を斬って、撃って、燃やして、そうして消滅させていく。それが今の俺のやるべきことだった。
こうしてどれだけの時間が経っただろう。幾つもの異界を渡った今、そんな感覚は消えてしまった。痛みにはとうに慣れた。どうせ死ぬことはない、なまえの血とあのときの赤い水おかげで(というには微妙な気持ちだが)俺は不死の体だ。

「なまえとの約束だからな……全部、終わらせるって」

そうだ。始まりはあの村だ。かつてオカルトな噂を確かめようと訪れた村。
その生まれた村を嫌っていた少女がいた。神の『花嫁』、つまりは生け贄となるべく育てられた少女。俺に心を開いてくれた、けれど守りきれなかった少女だ。俺の力が足りず贄として捧げられ、それでも精神だけは傍にいてくれた彼女は、歪んだ村を、村が生んだ化け物を、その根源を、全て消してくれと願った。彼女の導きもありどうにかそれを果たして、けれど似たような異形が他にもいることを知った。奴等みたいなのがいる限り彼女が安心できないだろうと、俺は戦い続けている。

煉獄の炎が異形を燃やし尽くす。この辺りはこれで最後だろう。さすがに疲れたなと息を吐き、ふと割れた鏡に気がついた。そこに映るものに、俺はいつの間にか荒立っていたらしい心が穏やかになるのを感じる。

「なまえ」
『私は此処にいるよ、留三郎』

俺に寄り添っているなまえに、俺は鏡越しに笑いかける。今の彼女は何かに映してしか見ることができない。それは彼女が肉体を失ってしまったからだが、それでもこうして傍にいてくれる。俺を導いて、行くべき道を示してくれている。

「さて、行くか」
『うん』

なまえが指し示す方角へ、俺は歩き始めた。
次は何がいるだろうか。考える、しかし無駄なことだと振り払った。相手が何であろうと負けやしない。奴等を倒して、全てを薙ぎ払って、早くなまえを安心させてやらないとな。そうしてまた、ふたりで笑うんだ。



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