君への距離 07

多分、私は自分で思っている以上に赤い顔をしている。
かっと集まる熱は今まで体験したことのないほどだ。授業で簡単な問題を間違えてクラス中に笑われたときなんかとは比べ物にならないくらい、顔が熱い。
けれどそれは私だけじゃないのだろう。鉢屋くんも、今まで見たことのないくらい真っ赤な顔をしている。いつも飄々としている、もしくはからかうような笑みを浮かべている鉢屋くんからは想像できないくらいに、真っ赤な顔を。
きっと同じ想いを抱いてくれているんだと、期待したっていい筈だ。

私にはいつも勇気が足りなかった。
自分に言い訳をして、距離を詰めようとする努力をしようとしなかった。鉢屋くんが距離を縮めようとしてくれていたのに、いつだってそれから逃げてばかりだった。同じ距離を保ち続けて、一歩踏み出して後戻りできなくなるのが恐かった。
弱虫な私は、けれど、ここまで来てもらって足踏みしているわけにはいかない。あと一歩分残された距離を縮められるのは、私の想いだけなのだから。

「私は、鉢屋くんが好き」

途端にぽかんとする鉢屋くんの顔。それが少しおかしくて、私は笑う。
急速に縮まった距離の立ち位置はまだ分からないけれど、きっとそこは今まで以上にあたたかくて、幸せな気分にさせてくれる筈。いつかちょうどいい距離だと満たされることを願って、私は鉢屋くんの手を握り返した。


end


 

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