ふたりのための幸せ計画。01

「勘ちゃんは優しいし人気者だよね」

そう面白くなさそうな顔をするみょうじの視線の先の廊下には、女子達に囲まれた勘右衛門の姿があった。この教室に来るつもりだったのに行く手を阻まれて動けないのだろう。きっとみょうじが不機嫌な顔をしてるのも気付いているだろうが、好意を持って接する奴等を無下にすることもできないのだ。気付けば男子に頼られているのを含め、それを優しさというのかどうか、私には判断出来そうにないが。

「聞いてるの、鉢屋」
「ああ、聞いてる聞いてる。『勘ちゃんは人気者だよね』」
「声真似?似てない」
「いや、似てる筈だ。雷蔵も八左ヱ門も大絶賛」
「えー……じゃない、そんなのはどうでもいいの」

私の得意とする声真似をそんなのだと……?いや、気にするな私よみょうじがこういったものの価値を分からないのは今に始まったことじゃない。私の見事な変装メイクも一言で切り捨てた女だ。あれ、なんで私こいつと友人してるんだろう。まぁ仲が悪いのも勘右衛門を困らせるだろうからこの関係を変える気はないが。勘右衛門は私とみょうじなら幼馴染みのみょうじを選ぶだろうし、そうすれば兵助たちとの友情も危うい。私は意外に友人関係を大切にするタイプなのだ。
そんなことはさておいて、不機嫌ゲージが右肩上がりのみょうじはぶつぶつと何かを呟き始めた。勘右衛門か女子達かを呪ってるのか、それとも自分を慰めてるのか。どちらにしろあまり触れたくないので言葉を掛けてそれを遮る。

「気になるなら行けばいいだろう?」
「そしたらあの子たちに睨まれるでしょ」
「勘右衛門が守ってくれるさ」
「女の子はあんたらが考えてる以上に陰湿なのよ」

うむ、それに関しては同感だ。直接的に殴りあう男子と違い女子の確執には見ていて凄まじいものがある。そんな状況を自ら作り出せというのは酷だっただろう、「すまん」素直に謝った。詫びと言っては何だが、解決案を出してやろうと考える。みょうじが勘右衛門と邪魔されず会えるようになる、ついでに幼馴染みの関係から一歩踏み出せないふたりの背中を押すような案を。

「……いい考えがあるんだが、試してみないか」

あ、この台詞は失敗フラグっぽいなと思ったが、勢いよく振り返ったみょうじの形相を見るにそんなフラグは意地でも叩き折らねばなるまい。

そんなわけで、月曜日から作戦開始だ。


 

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