教室の真ん中 01

「俺と付き合ってください!」

自習中の、つまり誰も勉強なんてしていなくて私語が飛び交うざわついた教室の真ん中で、竹谷くんが私に向かってそう言った。
私は驚いて読んでいた文庫本を手から落としてしまったし、教室のざわめきはぴたりと止んで、一拍遅れて注意しに来た筈の隣のクラスの先生を戸惑わせた。
顔を真っ赤にしている竹谷くんは私をじっと見つめていて、私の頬もじわりじわりと熱が集まるのを感じる。私は何が言いたいのかも分からないまま金魚みたいに口をぱくぱくとさせて、まるで声の出し方を忘れたみたいで。

「たけや、くん」
「うん」

しぃんと静まり返る中、英語の授業で教科書を読み上げるとき以上の緊張に包まれ、それでもどうにか発した言葉は、

「せ、先生、来てるから、座った方がいいよ」

がたがたとクラスメイトが席から落ちる音と、隣のクラスの先生の中途半端な注意の声を生み出した。


 

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