私と彼の五日間 01

月曜日の二限目、六十人程度が入れる小さめの教室。その窓際に座ると私は外を眺める。三階の此処からはこの講義棟に出入りする人が見えて、私はそれを注意深く見ていた。
すると講義の始まるほんの数分前、外に出ていく見覚えのある姿。私はそれを見つけるとそのまま彼を目で追い続けた。

何処の学部かは知らない、名前も知らない。年齢も知らないけど、入学したのは私と同じ今年の四月の筈。話したことは一度だけ。その程度の、関係。
それだけの関係だけれど、私は彼から視線が離せない。話してみたい、名前を知りたい、私のことを覚えているか訊いてみたい。これはただの興味なのか、それとももっと別の感情からなのかは自分でも分からないけれど、願うことはちっとも変わらなかった。

「みょうじ」
「なに、浦風くん」

名前を呼ばれて振り向けば、いつの間にか前の席に座っていた友人の浦風くんがこっちを見ていた。何を見てるんだと訊かれて、私は首を横に振る。ぼーっとしてただけよ、そう答えながら再度見た窓の外には、彼の姿はもうなかった。

いつも違う方面に歩き出す彼は、今日は何処に行くんだろう。追いかけたいけどこの授業は必修だからさぼれない。入学早々、出席点はないからと講義をさぼってテストだけ出るなんて器用な真似は、私には出来ないのだ。


 

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